MyFFF2018(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)全作品感想&ベスト


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今年もMyFFF(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)を鑑賞した。
今年も……と言っても一昨年は仕事での鑑賞だったし、昨年にいたっては風邪引いてるうちに終わってたのでプライベートでちゃんとお金を払って観たのは初めてだったりする。
というわけで早速長編12本と短編11本の感想を好きだった順に書いていきます。



 * * *




長編


1.『アヴァ』 レア・ミシウス(2017/仏) ★4.3 

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ろくにあらすじも読まず、視力が低下していく少女の感動話かなんかだと思って敬遠していたのだが、全然違ったどころか大傑作すぎて軽くショックを受けた。始終不穏な劇伴、生き地獄のような独白、生命力の化身みたいな少女の動きとカメラ、途方もなくエモい。母親役の「いつまでも若くいたい」系の痛いオバハン演技もかなりヤバい。つーかエモい。エモヤバ。あのオバハンが映っているときだけは常にザイドル映画のように画面がヒリヒリしている。一人の少女の成長譚だが、それでいて崇高なロマンス映画でもある。凡百の逃避行映画のセオリーを易々と超越したラストカットヤバすぎ。今年のmyfffベストどころか年間ベスト級。参りました。






2.『ジャングルの掟』 アントナン・ペレジャトコ(2016/仏) ★4.1

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面白すぎて全身がもげた。まるでサイレント時代の喜劇俳優が現代に蘇って文明の進化に大はしゃぎしているよう。お偉方が僻地に物を作ろうと机の上で画策している一方で現場ではあらゆる物(人体までも)が破壊されていくというシンプルな風刺も笑えるし、映画の全ジャンルを横断するかの如くあらゆる災難が襲い来るジャングルでの珍道中も革新的すぎる。昆虫の変態でここまで感動させる映画を寡聞にして知らない。気の抜けた劇伴も最高、あの曲が流れると画面のどこかで必ず誰かが何かをやらかしている。賢者タイムの如き緩急のバランスも天才的。ペレジャトコ、ラリユー兄弟、ギヨーム・ブラック、ジェローム・ボネル、フランスの新鋭作家の作品群をもっと見れる環境を作ってくれ!






3.『ロックンロール』 ギヨーム・カネ(2017/仏) ★3.8

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ダサい中年との烙印を押されてショックを受けたギョーム・カネが脱・ダサ中年を掲げてロックに目覚めたり薬をキめたりとダサさに拍車をかけていく。帰宅したら笑顔で出迎えてくれるマリオン、ドラン映画の出演が決まったとはしゃぐマリオン、ケベック訛りを練習するマリオン、レア・セドゥに役をとられて凹むマリオン、家で豆の栽培を始めるマリオン、旦那に冷ややかな視線を送るマリオン、神&神。元ネタ『ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール』のイヴァン・アタルはカネにブチ切れ。ロックの帝王にジョニー・アリディ。細かいことは抜きにしたエモすぎる着地点。総じてとても良かった。しかし前提に立ち返ると、家に帰ったらマリオン・コティヤールが待っている、それだけで何が不満なんだコラという気持ち。






4.『クラッシュ・テスト』エリック・グラヴェル(2017/仏) ★3.8

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あまり期待してなかったのだが凄く良かった。特にカザフスタン兵士との邂逅~丘に立つまでのシークエンスの最大瞬間風速は今年のmyfff随一かもしれない。散々不安を煽っておいて救い上げる演出はアウグストの『最後のデート・ショウ』みたいだ。ある意味では咆哮こそないもののナデリ映画に匹敵する生へのエネルギーを感じた。検問の兵士役でジェラール・ドパルデューみたいなオッサンが出ていて、まあそれはただの無関係なオッサンだったのだが、後々調べると三人娘の一人がドパルデューの娘だった。






5.『1:54』 イエン・イングランド(2016/カナダ)) ★3.5
   ※カナダ・ケベック招待作品

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学校でいじめを受けているゲイの少年が陸上競技でいじめっ子を見返すというLGBTのスポコン物で、2016年製作とは思えない題材の陳腐さに序盤は鼻ほじりながら見ていたのだが、大衆の中での活躍、異性との接近、周囲の理解と紛うことなき王道路線に突き進んでいると同時に映画全体が一筋縄ではいかなそうな不穏な様相を醸し出し、終盤の展開にはもう完全に打ちのめされた。勘弁してくれ。テーマを盛り込みすぎてとっ散らかってる感は否めないが、このエンドロールの前には微々たる問題。序盤の伏線の作用の仕方がエモすぎる。あと主人公と仲良くなるジェニファーちゃん、最&高。






6.『ウィリーナンバー1』 リュドヴィック・ブケルマ、ゾラン・ブケルマ、マリエル・ゴティエール、ユーゴ・P・トマ(2016/仏) ★3.5

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周りに理解されないからと言って無関係の人に当たり散らすダウン症の青年を「天使」と形容する気持ち悪い価値観を押し付けてくる『八日目』なるゴミ映画があるが、それと比べるとこの映画は適応障害のウィリーを美化せず、鈍感でわがままな一人の人間として真っ当に描いているのでとても好感が持てる。行き詰まったら自殺した弟の亡霊を召喚して自問自答。ウィリーナンバー2ことゲイの青年(いきなり女装して歌い出すシーンがエモい)とのやり取りもヒリヒリしつつも小気味良い。ラストは『八日目』を含む今まで作られた社会派の面を被った「障害者は辛いよ」系映画への強烈なアンチテーゼともとれる。胸がすいた。






7.『森の奥深くで』 ジル・マルシャン(2016/仏、スウェーデン) ★3.3

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エッグルストンの『ロング・ウィークエンド』的な不条理な大自然の脅威みたいな映画かと思っていたが、俺は眠らないんだと嘯く父、あれは本物のパパじゃないと囁く子供たち、異形の男、塗りつぶされた写真と精神的・視覚的ギミック満載のニューロティック・スリラーだった。『シャイニング』へのジル・マルシャンなりのアンサー(つーか次男坊なんてダニー・ロイドそのまんま)ともとれる。前半こそ意味深な被写体を執拗に映す不穏な画面の連発で興奮したが、後半は親子のクローズアップから森林のロングショットの繰り返しで話が急に停滞するのでちょっと怠かった。海外のサイトでは『ウィンターストーム/雪山の悪夢』との類似点を指摘されているが、自分は観ていないので何とも言えない。






8.『婚礼』 ステファン・ストレケール(2016/ベルギー) ★3.2
   ※ベルギー招待作品

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宗教や文化の違い(主に中東や西アジア)を観客に提示する人生辛いよ系の映画は正直なところ見ていてダルい。中絶する胎児について周りの人間が「これは赤ちゃんではない」「医療用廃棄物として処理される」と言って少女が複雑な表情をするカットもしつこくてウンザリ。ただ因習から逃れて地元のチャラ男と遊ぶ束の間の現実逃避はどれも良かった。特にナイトクラブから抜け出して夜の街を疾走するシーンなんかはもっとダラダラと情緒的に撮っても良かったと思う。別荘でのキスシーンも美しい。あと童貞とのskype結婚ワロタ。ラストへの伏線はちょっと露骨すぎる。






9.『スワッガー』 オリヴィエ・バビネ(2016/仏) ★3.0

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思いのほか興味深く見れた。特に各々の恋愛観を語り出すあたり。ミッキーマウスをケチョンケチョンにこき下ろす女の子のロックっぷり。






10.『ヴィクトリア』 ジュスティーヌ・トリエ(2016/仏) ★2.9

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どうしようもない男たちからの依頼が殺到してシングルマザー弁護士がパニックになるという話だが、コメディの体裁をとりながらもバーホーヴェンの『エル』のように限界を迎えた女性が人生を再構築する生真面目なドラマだった。色々と適当なように見えて計算され尽くされているのと、案件が込み入りまくっているので意外と頭を使う。女性が女性に対して言い放つ「女の敵は女性特有の被害者根性よ」という台詞は女流監督にしか書けないなあとしみじみ感心した。後々調べて分かったのだがヴィクトリアは当時38歳、転がり込むサムは22歳らしい。羨ましいなあちくしょう。






11.『パリ、ピガール広場』 アメ、エクエ(2016/仏) ★2.6

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東京国際映画祭で絶賛されていたので今年のmyfffで一番楽しみにしていたのだが普通につまらんかった。普通につまらなすぎて何も感想が浮かんでこない。






12.『夏が終わる前に』 マリャム・グールマーティ(2017/仏、スイス) ★2.4

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BSの何ちゃら紀行みたいにオッサン3人が私的な話をしながらダラダラと旅してるだけで、ロードムービーというよりもドキュメンタリーに近い。オフビートの面を被りつつも核心をついてますよ感を唐突に出してくる終盤は心底ウンザリ。夜の遊園地は最高に良かったよ。ずっとそこで語り合っててくれ。





今年の長編は『アヴァ』『ジャングルの掟』のカルト・ロマンスの2強。更に4位の『クラッシュ・テスト』と併せて並々ならぬ生命力を持った人間の躍動っぷりが印象的だった。最下位の『夏が終わる前に』まですべてを含めて共通しているのが主人公あるいはそれに準ずる人物が何かしらの苦悩を抱えていることで、第6回MyFFFの『彼らについて』のようにひたすらハッピーなロマンス・コメディが1本は欲しかったなあと思う。




短編



1.『ノー・ドロウニング』 メラニー・ラルー(2016/仏)

断トツのベスト。水槽、噴水、ネオン、夜のマンションなど視覚的にも精神的にも豊潤。文句なし。


2.『サマードレス』 フランソワ・オゾン(1996/仏)

初期オゾン。海で逆ナンしてきた女が「私も18歳よ」と言うが、お前絶対25くらいだろ。まあそれはさて置き、LGBT映画は妙に説教臭かったり登場人物がやたら苦悩していたり差別と闘っているものが多いが、俺はもっとあっけらかんとして各々が楽しんでいる様を見せつけてくれる方が良いと常々思っている。最近はそういう作品も増えてきたが、それを90年代でやっているところがやっぱ凄えなあと思う。


3.『ラザール』 トリスタン・ロム(2016/仏)

超カラフルでラブリーでポップな壁紙だらけの部屋に冴えないオッサン2人が住んでいるという説得力の欠片もない設定に感服した。しかし女があの道具を取り出した瞬間はそっち系の話かと大興奮したんだが落胆に終わった。


4.『美味しい美女』 アクセル・クティエール(2017/仏)

大天使ドヌーヴの破壊力。


5.『ストローク』 モルガン・ポランスキ(2017/仏)

ちょっと長めの洒落たCMみたい。


6.『永遠に愛して』 ホリー・ファトゥマ(2016/仏)

少年が螺旋階段から落下する時のショットは凄かったよ。


7.『脚本家』 フランソワ・パケイ(2017/ベルギー) ※ベルギー招待作品

美人妻寝取られ物。


8.『シャス・ロワイヤル』 ロマーヌ・ゲレ、リーズ・アコカ(2016/仏)

みんなピリピリしてんなあ。


9.『死と父と息子』 ヴァンサン・パロノー(2017/仏)

ゾンビ生誕新説。


10.『サマーフィルム』 エマニュエル・マレ(2017/仏)

長編の『夏が終わる前に』とほぼ同じ感想。
   

11.『皇帝よ、永遠なれ』 レア・ラパン(2016/仏)

何のこっちゃ。




後半の感想の適当っぷりには触れないでおくとして、長編と同じくこちらも『ノー・ドロウニング』『サマードレス』の2強状態。後者が旧作であることを考えると、新作はもう少し頑張って欲しかったなあというのは否めない。


 * * *


個人的にMyFFFの醍醐味は今後ソフト化される見込みのない新作長編映画が12本1,500円以内で見れるという圧倒的お得感の他に、「金払ったんだから全部観ねえと」というケチくさい根性によって、普段ならまず出逢わない傑作をお目にかかれるという点がある。今回長編で前評判やあらすじから期待していたのは『ジャングルの掟』『パリ、ピガール広場』『森の奥深くで』の3本だったが、お世辞にも傑作だった!と言えるのは『ジャングルの掟』だけだった。『アヴァ』や『クラッシュ・テスト』なんてレンタル店に並んでたところでまず観ない(笑)まあそんなわけで、僻地に住んでいる自分にとっては安価で見られるオンラインの映画祭は凄く貴重なので、来年以降もぜひ続けていただきたい。




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プロフィール

寂々兵

Author:寂々兵
都会の映画祭や名画座に指を咥えながら日々を過ごす田舎在住の一介の映画好き。最近は80年代前後の未DVD化作品の発掘に邁進中。将来の目標はヒモ。

*好きな監督*
ジャン=ピエール・メルヴィル
キム・ギヨン
クロード・シャブロル
エドワード・ヤン
アレックス・デ・ラ・イグレシア
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