遁世雑記其ノ二十一 「ゼミ選択葛藤記(後編)」

(前回のあらすじ)








シュッ











シュッ











シュッ









……あっ、ごめん








ダーツの練習してた







 * * *





ドイツの総統も、大日本帝国陸軍大将も、技術科の先生も、インチキおじさんも、目の上ブルーなおばさんも、どこの誰とも分からぬクソババアも、皆が皆口を揃えて云うのが「人生思い通りにいかないねぇ」てなことであって、
そら人生うまい具合にぽんぽん行ってたらつまらないわけで、
いやそれにしてもこれほどまでにうまく行かないものかね、
というくらいうまく行かないことでお馴染みの俺の人生なんだけども、
その例に漏れず、前回では「ゼミを希望した教授がゼミを持っていなかった」という、
FC2動画でいいの見つけたと思ったら有料会員限定だったみたいな究極の絶望感に打ちひしがれ、
思わずやけくそで近くに置いてあったメモ帳に正岡子規の肖像画を描いてみたはいいものの、
正岡子規を巧く描いたところでM教授がゼミを急募するでもなし、
やはりここは順当に、かねてより狙いを定めていたU准教授のゼミを選択しようと思ったのであった。


しかしここに来て問題が一つある、
U准教授というのはまだ若くノリが良いため、人気があることでお馴染みなのである。
担当コースも学生数の多い会計科目のコースなので、おそらくゼミの倍率も凄いのだろうと推察した(ゼミ定員は基本9名)

俺は一回生の時期に何とか多くの単位を取得したので書類審査なら勝ち残る自信があるのだけども、都合の悪いことに、このU准教授のゼミというのはなかなかハードなため、それに着いてこれるかどうかを試すための選抜試験があるのである(余談であるが選抜試験という響きがかっこよくて好きだ。大好きだ)

U准教授は簿記や監査論などを主体とする会計学専門の教員のため、選抜試験では日商簿記検定3級の範囲から出題される問題を解いて相対評価でゼミ生を選抜するのである。
俺が会計学を学ぼうと思い立ったきっかけが思い出せないんだけども、とにかく社会人になってから何かと役立ちそうな簿記検定を取得するためにこのゼミを選んだ。

閑話休題、ゼミの申請者一覧が掲示板に貼り出されるその日、朝から大興奮で実に快便であったという話はさておき、
倍率が何倍であれ、U准教授と決めたからには何としても入らなければならぬという決意を持って、掲示板へ一歩一歩と近づいていく。

うむ…… 見えてきたぞ…… 一体何十人の愚民どもがU准教授を選んでいるのだ……
敵は多い方が燃えるぞ…… ほう、徐々に見えてきた……













経済学部ゼミ1次募集申請者数
Y准教授:








定 員 割 れ










嘘やん……





何度見ても8人は8人であった。
いや、8人って平均より多い方なんだけども、なんかこう、ムラムラするっていうか、やきもきするっていうか、ムラムラする。

しかし定員割れしていたとしても油断はできない。
実はU准教授の場合は特例で、9人に満たない場合でも選抜試験が行われ、ダメな人は叩き落されるという鬼のようなシステムが待っているのである。
そのため、昨年のゼミ生も選抜の結果6名になった。
万が一試験が不出来だった、或いは他の生徒と比較して大きく差が開いていた場合、
一回生の時の取得単位数や成績、資格、活動、趣味、性癖に関わらず振り落とされるのだ。


けれども、こんなことでへこたれる俺ではない。
自動車に乗る前には保険に入るように、きっちりと第2・第3希望のゼミを見通しているのだ。

第2希望はN准教授という、こちらも会計学の若い女の先生で、目的がU准教授と同じく日商簿記の資格なので選んだ。

更に第3希望のY教授は非常に優しいことでお馴染みで、入門ゼミでは授業の終盤に学生に飴を配るという吉本所属の某軍曹みたいな教員なんだけども、ゼミで長く付き合うからには気軽な感じで接せそうな教授がいいだろうということで彼を選んだ。

ちなみに申込書には第1希望しかかけないため、
もしもU准教授のゼミに受からなかった場合は、再度申込書を提出するという方法になっている。
1次募集の段階で定員を超えたゼミは2次募集は行われないので、人気のゼミはほとんどが1次募集で打ち止めとなるんだけども、
U准教授が8人なのだから今年は会計コースが不作なのだろうと考え、
N准教授とY教授に保険をかけておいたのである。
というわけで、一応1次募集の人数をチェック。














経済学部ゼミ1次募集申請者数
N准教授:21
 Y教授:17








    。 。
  / /  
 ( Д )   スポポーン!!












そうだ、こたつの中でヨガをしよう(錯乱)






もし俺がマクレーンだったらハンスに便乗して爆破テロ起こしてるとこなんだけども、
保険が効かないと判明した今、俺に残された道は一つしかなくなった。




一週間後



禁映画、禁音楽、禁小説、禁欲の元、真剣に勉強してやろうじゃないのと机に向かったんだけども、
14秒で筒井康隆に手が伸びたので、あれもこれも禁止せずに、うまいことマッチングしながら勉強することにした。


そんなこんなで、俺はU准教授のゼミに入ることを目標に、
授業の間の空き時間を駆使しながらも簿記の勉強に励むのであった。






ゼミ選択葛藤記・完








~その後~




U准教授のゼミには受かったものの
工業簿記でメタメタに躓いて簿記を諦め早2年が経つ
スポンサード リンク






遁世雑記其ノ二十 「ゼミ選択葛藤記(前編)」

(2011年6月記 改稿)



ゼミと云うのは大学生が少人数教育の下、専門科目の知識を身に付けたり、人生経験を豊富にしたり、新陳代謝を上げたり、合コンで良い女の子をお持ち帰りしたりするアレである。
俺の大学の学部では、ゼミは二回生の後期から始まる必修科目であり、ゼミの教師・学生とは二年半を共にすることになる。
よって、その選び方は慎重でなければならないわけであって、間違ってもダーツで決めたりしてはいけないんだけども、このゼミ選択というのが実に億劫であった。


何せ大学というのは高校と違い、各々が自由に授業を選ぶものだから、友人同士がお互いに同じだけの教授を知っているとは相限らぬのであって、要するに俺なんぞが「U准教授いいよねー、俺あのゼミ行こうかなー」と云ってみたところで、U准教授の授業を受けたことのない、ましてや存在すら知らぬ友人からすれば「誰やねんそれ、それよりH准教授の方がええやろー」となるわけである。しかし察しの通り、俺はH准教授を存ずるところではなく、この時点でゼミ選択における公平性が失われているのである。

ゼミ選択がいかに重要かと云うのは私の友人を例に出すと分かりやすい。
例えば関東に在住の友人Wなんぞは、ゼミの担当教員が厳しかったために卒論で手一杯で就活に失敗した。
また北陸に在住の友人Hは、派閥のあるゼミ教員に付いてしまったため、中間報告会では対立する派閥の教授に徹底批判されて大喧嘩になった。
或いは北海道に在住の友人Sはオリジナルレシピを書いた卒論を提出した

このように、ゼミ選択によって今後の学生生活にも何らかの影響を及ぼすことは目に見えて明らかである。
そうなると俺の脳裏によぎるのは、
「もし俺が良いと思っているU准教授が大失敗で、H准教授のゼミが最高だったらどうしよう」というジレンマであって、
そうなった場合は、U准教授のゼミが葬式ばりにしめやかに執り行われている間に、H准教授のゼミは大乱交パーティなんてやってる様を嫉妬の眼差しで見ながら発狂して爆死することになるんだけども、H准教授のゼミが乱交をやるとは限らぬのであって、こうも怯えていては夜中に一人でトイレも行けないと頭をかかえて畳の上を害虫の如く転がりまわる日々である。

話しは少しばかり遡り、2011年の6月頃というのは大学生活に慣れてきて怠惰が発生し始め、月曜から金曜の五日間、全て遅刻する週もあるという有様であった。
特に水曜の2限、M教授の授業へ行くのには特に足取りが重く、決して苦痛な授業では無いんだけども、まぁ何と言うか、要するにものすごく苦痛な授業なのである

しかし何たることかある日のこと、何故か「そうだ、今日はあの授業に行こう」と思い立ったのである。
俺はかつて、「ふと思いついたことがあればすぐに実行に移しなさい、背後霊様が導いてくださっているのよ」どこの誰かも分からないクソババアに突然説教されたことがあるため、これも人生の教訓なのだと受け取り、この授業に赴いたのである。

さて、このM教授というのが美輪明宏も驚愕して鼻血を出すほどの人生経験者で、
情報学、定量評価学、環境学、統計学を研究し、砂における宗教を多岐に渡って書物を漁り、ギリシャ語、ヘブライ語、アラビア語に明るく、戦争研究においての韓国語にも感興があり、キリスト教や仏教を研究する傍ら、バレー、ラグビー、テニス、スキーなどにも興じ、アジア、アフリカ、アラブの国を旅行するのが趣味であり喜びというとんでもなく博識で多趣味な人物なのだが、おかげで授業では何を言ってるのか全然分からない

五分前には仏教の話をしていて、ちょっと目を離した隙に今度は竪穴式住居の話をしており、もう何がなんだか分からない。

しかし、どこの誰かも分からないクソババアに受けた助言を無駄にしないよう、M教授の話にしっかりと耳を傾けていたのだが、ここで思わぬ言葉を聞いた。

「最近は日本も変わってしまって、就活とか、企業訪問とか、どうもせせこましいと云いますか、これも時代の流れと受け止めなければならないんだけども、もう少しゆったりとできないものですかねぇ。学生には、この学生の期間を大事に使って、社会に出た後のことよりも、もっと今しかできないことを色々やってほしいと思うんですよ。今ではこれじゃ、職業訓練所みたいなものですよ」

ここで、俺の頭の中で何かが音を立てた。素晴らしい。その考え方に俺は共鳴するぞM教授。
つまるところ、これまでの人生で勉学をほとんどしてこなかった俺が発言する権利など無いんだけども、ちょっとだけ云わせてください、嗚呼、ありがとう、要するに俺も最近の大学や就活の在り方を疑問視していたわけであって、それをこの教授が端的に説明してくれて、俺はどひゃひゃひゃひゃひゃとなったのである。

ここで、あのクソババアの助言が耳に浮かんでくる。
そう、俺はこの教授のこの言葉を聞くために、偶然にも早起きして授業に赴いたのであって、
それはつまり、俺がこの教授のゼミに入れば人生がうまくいくのだというご先祖様一同からのメッセージだったのである。
くくくくく、これで俺は人生怖いものなし、同じ考え方を持つM教授のゼミに行けば、
俺はプール付きの豪邸を持ち、映画鑑賞が趣味の年上でメガネでクールで変態な女性と結婚して、
その奥さんとミヒャエル・ハネケの「ピアニスト」を観ながら「この女性、マゾヒストだわ!!」と叫びながらビンタしたり、
はたまたデヴィット・リンチの「ブルー・ベルベット」を観ながら「この女性、サディストだわ!!」と叫びながらビンタされたり、
そういうアーティスティックで狂気じみた素晴らしい人生を謳歌できるのである。
浮かれた俺は、嗚呼、ゼミ選びのことで悩んでいた過去の日々が嘘のよう、小説を読み、音楽を聴き、絵を描き、映画を鑑賞し、好き放題やってきた。

六月も終盤になり、いよいよゼミの説明会が開催され、
俺は「うわーゼミ誰にしよかなー」「T准教授かS教授か悩むわー」と思案に暮れる友人たちを尻目に、
「フハハ、悩め悩め、俺は既にM教授と決めているのだ、お前たちが浮かれている間に俺が如何なる苦痛に苛まれこの結論に到達したか貴様らに分かるまい、ヒャッハー!!」戦闘中にネリエルが幼児化したノイトラくらいのハイテンションで臨んでいて、いざ説明会が始まって初めて知ったことだったんだけども、








M教授はゼミを募集していなかった。























あの……みんな……



U準教授とN準教授、どっちがいいかな……












(後編に続く)




予告

どこの誰とも分からぬクソババアは、やはりどこの誰とも分からぬクソババアだった。
もうなんだこの人生。ちょっと期待したらこれだよ。もういいよ。
どうせ人生に希望なんてないんだよ。もう分かったから帰って煎餅でも食おうぜ。

次回、ゼミ選択葛藤記後編「うーちゃん、ダーツでゼミを決める


スポンサード リンク






遁世雑記其ノ十九 「耳鼻科通院記最終回 拝啓、鼓膜殿 ご機嫌如何」

(前回のあらすじ)

大型病院にて俺が鼓膜に穴を開けるという所業を成されている間に、5年来の芸術仲間であるOさんが漫画賞を受賞しましたよ!(スペリオール新人コミックオーディション優秀賞「ポルノをかく」
Oさんは俺にとって雲の上の人物であり、ライバルであり、セフレであり、変態であり、またサミュエル・フラー、アンドレイ・タルコフスキー、はたまたロベール・ブレッソンやロバート・アルドリッチなどの話ができる数少ない友人の一人です! そんなわけなんで、皆さんはこんなクソの掃き溜めみたいなブログなんて読んでないでさっさとOさんの漫画を読みましょう! おら早く読めよ哲学書で殴るぞ サルトルで殴る





 * * *




10月8日(火)

通院が始まりました。先生の診療を受け、症状の経過を見つつ、中央治療室にて抗生剤の点滴を受けました。


10月9日(水)

通院2日目。先生の治療を受け、症状の経過を見つつ、中央治療室にて抗生剤の点滴を受けました。


10月10日(木)

通院3日目。先生の治療を受け、症状の経過を見つつ、中央治療室にて抗生剤の点滴を受けました。




なんかアサガオの観察日記の序盤みたいな殺風景な幕開けをしました、耳鼻科通院記もいよいよ最終回となりました。
通院記と銘打っているにも関わらず最終回から通院が始まるという夢野カケラの漫画みたいな感じになってますけど、ここに来て大問題が発生しまして。

通院の3日間が上記に集約されている通り、通院が始まってから何一つ面白いことがないっていうね。

とりあえず順を追って出来事を思い出していきますと、
まずは通院初日の8日、先生が変わりました。美人女医ではなくなりました。女医は女医だったんですけど、腕相撲の無敗記録を持ってそうな女医でした。
「昨日A先生に見てもらってからその後どうですか~」という導入に始まり、診察してもらった情報をフル活用して色んな説明を受けました(初診から大型病院で見てもらう利点はこの情報共有の細かさ。町医者からの紹介だとこうすんなりいかない)

で、鼓膜の穴に関しては痛みが凄かったものの、穴自体は塞がる兆候を見せているので、うまく回復すれば手術は必要ないとのこと。
あとは薬の投与で炎症を抑えるので、あと3日くらい来てくださいねーと云われ、中央治療室にて点滴。
ベッドに寝転んで、相も変わらず太い針をぶっ刺され、天井を見ながら人生について考えていると、隣から軽妙な爺さんとナースの会話が。

「わしな、今日の朝に具合悪くなったんやけど、何となく今日くるんちゃうかて思っててん。何でやと思う?」
「どうしてですか?」
「実はな、丁度先週の今日、火曜や、具合悪なってな。その前が、またその前の火曜や」
「毎週火曜に具合が悪くなるんですね~」
「そうや。周期的に具合が悪くなるんや。生理か、云うてな、ガハハハハ!!」
「それでは点滴の用意ができましたので、腕を出してくださいね~」



触れてやれよ



セクハラで訴えられかねない多大なるリスクを背負った渾身のボケがスルーされていました。
カーテンで遮られていたものの多分この時爺さんは焼き土下座が決定した利根川みたいな顔してたことでしょう。

そんなこんなで初日は終わり。


2日目の金曜も同じ先生(以降ずっと同じ)で、経過も順調で炎症も収まってきてるので早期回復が望めそうとのこと。

この日の点滴治療では、向かいのベッドに中国人カップル(兄弟?)がいました。
治療していたのは男性で、日本語が分からない様子なので、
付き添ってる女性の方が通訳をしてました。
この女性、ロックな外見の割に話し口調は穏やかだったんですが……

「……はい、ありがとうございます」
「それでは、何かあったらナースコールをお願いしますね」
「分かりました。トイレに行きたい場合はどうすればいいですか?」
「その際は、点滴ごと移動できるのでおっしゃってくださいね」
「ありがとうございます。点滴が終わるまでどのくらいですか?」
「およそ2時間30分ほど」
っだひゃぁぁあああああああ!!??



もののけが


眠気も吹っ飛びました。
調べてみると、点滴3時間以上っていうのは普通にあるらしいです(体への急激な負荷を抑えるため)

こうして思い返してみると、何もなかったと云いつつ色んなことがある通院生活です。
面白いことなんてその辺に落ちてるもんで、それをいかに笑いに昇華できるかということです。
視野を広く持って、些細なネタを見落とさないように心がけたいですね。



通院3日目。



本当に何もありませんでした



ただこの日は、回復が思ったより進んでいるので、追加分の薬を出され、1週間後の検査を残して通院は終わりました。
ヤブ医者の治療で苦しむこと1週間、やはり大型病院に行って正解でしたね。

追加分の薬は、粘膜やら染色体やらをどうにかする物ばかりらしく、ステロイドや抗生物質は終わりとのこと。
今、耳が何ともない(鼓膜再生までは自分の声が聴こえにくい)のは薬のお陰で、やめてしまったら再発するんじゃないかとの懸念もありましたが、先生を信じて1週間を乗り切ることに。
この間、先述した違和感が一向に取れず、またカサカサ音も異常にするため、不安に押しつぶされそうな日々でありました。

で、いよいよ薬もすべて切れた10月15日。
担当医は同じくディベートで押されたら拳で圧倒しそうな女医でした(かなり頼りになる)


「その後どうですか、よくなりましたか?」
「痛みは殆ど無くなったんですけど、違和感がすごいです」
「そうですか、ちょっと見てみますね」
「はい」
「…………あー、これは……」
「……どうしました」
「……鼓膜にカビが生えてますね……」







鼓膜にカビが生えている








そんなカビの生えてほしくないものランキング第1位のものに生えられても……
(2位一張羅のスーツ、3位高級フランスパン、4位ラブホテルのシーツ、5位コンドーム)




「鼓膜にカビですか……そりゃ一体どういうことなんですかね」
「症状は大したことないんです。注入薬で治せますから。原因としては……抗生剤が効きすぎたんですね。耳の鼓膜っていうのは元々良い菌と悪い菌がいるんですよ。で、悪い菌を取り除くために抗生剤治療をしたんですけど、効果が強すぎて良い菌まで死んでしまって、カビが生えてしまったということです」


ヤブ医者の抗生剤は効かずに中耳炎が悪化して、
大型病院の抗生剤は効きすぎて耳にカビが生えた。

ははっ! こりゃぁ一本とられた! 

山田くん! 座布団燃やしてしまえ




「痛みとかはあるんですかね」
「痛みはもうないと思います。注入薬を入れた直後はめまいなどの症状があるかもしれません。違和感は残るかもしれませんが、1週間薬を入れれば綺麗になりますよ」
「はぁ……」
「ということで……次回、22日にまた来てくださいね」






また来てくださいね








また来てくださいね











はい行きますよ皆さん



せーの





俺たちの通院は、始まったばかり!!
(ご愛読、ありがとうございました!)













~後日談~


完治しました




(耳鼻科通院記・完)


スポンサード リンク






遁世雑記其ノ十八 「耳鼻科通院記3 薬漬け医療を垣間見た」

(前回のあらすじ)

耳の病気になってしまったので大型病院に行ったところ担当が美人の女医で目を輝かせているうちに鼓膜に穴を開けるとかいう意味不明な治療を施されることになったし、その頃我が家では寺山修司をデフォルメしたような親戚のおっさんが祖父の命日でやって来て豪快に煎餅食ってたら奥歯が抜けた。



 * * *



鼓膜に穴を開けるためにロビーで待たされる俺。
この時は不安さえあったものの、現代医療は進んでるし麻酔もするだろうし、そんな痛くないだろーふっははーと余裕をかましており、まぁ後々この待ち時間を使って解脱でもしてりゃ良かったと後悔することになるんですけど、そんなこんなで名前を呼ばれて診察室へ。

用意される器具がパワーアップしており、独特の緊張感。
「まずは洗浄しますね」
耳に妙な器具が突っ込まれ、ブッシャーと水が噴射される。(脳内ではどこの馬の骨とも知れないうんこみたいなおっさんが「あばばばばー」と奇声を発している)

そこからの記憶が少し飛んでるんですけど、歯医者で用いられるキュイーンみたいなやつを耳に突っ込まれ、ウゴゴゴゴ、キッシャーーーー、クゴッゴッゴッとエイリアンVSプレデターみたいな擬音が脳内に響き渡る。
この時点でかなり痛く、特に神経が集中してるあたりなので目も回ってくる。

「では、痛み止めを打ちますね。痛み止めが痛いですよー」
先生それは笑うとこですかと突っ込みたかったものの、完全に目が笑ってないので「ふぁ、ふぁぁ」と謎の返事。

痛み止めを打たれた瞬間の激痛たるや筆舌に尽くし難く、アニメとかでぶん殴られたキャラの目が×になって星とヒヨコがピヨピヨと頭上で回ってる図が脳内で映し出され、ハンカチ咥えてりゃ良かったと思うほど歯を食いしばり、手は小刻みに震え、顔は紅潮し、クハァと声が漏れ、やがて世界は滅びたのであった。

「終わりました。……大丈夫ですか?」

意識が戻った頃には俺はゲラゲラと笑っており、「結構、これは、痛いっすね、くぽぽぽ」町田康の小説に出てくる奇人みたいなよく分からん返事。
想像以上に痛かった混乱と、顔の筋肉という筋肉全て緩んでめちゃくちゃなアヘ顔を晒したショックで、気付いたら治療も終わって変な液体薬を入れられ、その後の措置など分かりやすい説明をされました。

「この部分に穴を開けて、膿を吸い出しました。後は鼓膜の穴が塞がるかどうかですが、成人男性には個人差があります。幼児はすぐ塞がりますし、高齢の方はなかなか塞がりません。塞がらなかった場合は常に耳に違和感が残ってしまうことになるので、半年後か1年後に手術を行うことになります。で、前の病院で出されたステロイドに加え、強めの抗生剤を用いて一気に治すので、3日から長くて1週間は通院治療をしてもらいます。予定とかは大丈夫ですか?」

その時俺はどうしておにぎりはあんなに美味しいんだろうとか考えてたのであんまり話は理解できなかったんですけど、とりあえず深刻な面持ちでうんうん頷いてました。

で、今日出される薬の説明。横文字が多かったので殆ど聞いておらず、耳のことだけではなくその他人生の色々が一気に押し寄せてきて物凄い暗い表情に。
再びロビーで待つように指示され、重い足取りで帰る俺。待合に座ってる人たちの視線が痛かったです。

「まぁ、見てあの子。まだ若いのに、あんなに暗い顔して」
「本当だわ。ものすごく老けてる。負のオーラが半端じゃないわ」
「ねぇねぇ、見てママ、あの人絶対syrup16gとか好きな人だよ

切開後、液体薬を注入されて綿を詰められていたため、完全に左耳しか聞こえない状態で待つこと40分。
名前を呼ばれる頃には、一周回ってハイになってたので、割と軽い足取りで目を大きく見開いてにこやかに手続きを済ませました。
あんまりニコニコしすぎて精神科に回されたら困るので、顔をマスクで隠して書類を書き、料金支払いの説明を受けて解放。

自動精算機での支払いになるので、カードを入れて待つこと数分。
ぼーっとしてたら液晶に金額が表示されました。
「10,900円」





1 0 , 9 0 0 円







く、くそが……
教育委員会のゴミめ……(※違います)



色んな意味で絶望しつつ薬局へ。
薬局のおばさんが驚くほど丁寧で、入った途端駆け足で寄ってきて、処方箋を奪い取って待合席まで案内してくれました。
待つこと10分、さっきの人とは別のおばさんが、箱にどっさり入った薬を持って登場。
え? 何それは? 引出物のあられ詰め合わせ?

あまりにたくさん放り込まれた薬の束に、薬剤師のおばさんも思わず「いっぱい出ましたね~」下ネタ以外の何物でもない発言をしてくれました。
「これがステロイド、これが抗生剤、これが粘膜を云々、これが染色体云々、ヒスタミン、メチコバール、コリン……」
「1回何錠飲むんですか?」
「朝は10錠ですね」






1 0 錠






副作用で性欲なくなるわーとか冗談で云ってたらその日の夜絶倫だったという面白い話は置いておきまして、
全部合わせて150錠くらいの薬を持たされて帰宅しました。

ヘッドホンもカラオケもシャワーも激しい運動も禁止されて、
できることといえば扇風機の掃除くらいしかないので(※そんなことないです)
扇風機をめっちゃ綺麗にした10月の初旬でございます。

これから毎朝9時に、点滴のための通院治療。
果たして俺の右耳はどうなってしまうのでしょうか。



次回、耳鼻科通院記最終回
隣のおっさんのギャグがナースにスルーされててすごく切ない

スポンサード リンク






遁世雑記其ノ十七 「耳鼻科通院記2 さよならヤブ医者、こんにちは大型病院」

(前回のあらすじ)

耳が劇的に痛くなったので病院に行こうと駅前に出たところ、いかにも芸大生といった感じのカップルが俺の前を歩いており、彼氏の方が「お前それだと横から入って後々出られへんようになるタイプのやつやないか!!」とつっこんでいたので、こいつらは一体何の話をしてるんだと考え込んでいたら季節はもう秋になっていた。


 * * *

(※後半ちょっとだけ痛い描写があるので苦手な人は気を付けてください)



というわけで、幸いにも家の近くにある大型病院に出向いてきました。
月曜というだけあって、ロビーから既に人、人、人。
もうビッグサイトかってくらいに人がいて、思わず雲ができてないか見上げたりしましたが、そこまでではなかったので一安心です。

さて、受付や手続きで非常にてんぱりましたが、何とかこなして耳鼻科のフロアへこぎつけました。
診察室が3つあり、診察が回ってくるとそれぞれの医師が館内マイクで呼び出すシステム。
俺の担当になったのは何と、目算20代の美人女医。

人生22年……初めて美人の女医というものに出会いました。
「一回は綺麗な女医に診てもらいたいよなぁ」と云ってたKくん、体調いかがですか。
「もう彼女とかいらねぇから女医のセフレが欲しい」と呟いてたSさん、セフレは見つかりましたか。
「病院物の最高峰は女医が裏で女王様になるやつだろ」と語っていたIくん、パンツを反対に穿く癖は治りましたか。
「西川みたいな高慢な女をヒィヒィ云わせたとき、俺は人生の役割を終える」と豪語したYちゃん、非営利団体はTPOじゃなくてNPOです、早く気付いて。

そんなそれぞれの思いを抱えて、俺は今、美人女医の診察を受けるっ……!







ちょっと知り合いの変態率やばいことになってますが置いておきまして。

正直なところ、若い先生で大丈夫かと思った感は否めませんが、なかなかしっかりしてる人でした。
色々と診察をして、思ったより酷かったらしく、聴力検査の結果も右耳が圧倒的に下がっていたため、採血検査と点滴をすることに。
そこまでガッツリした診察だと思っていなかったので戸惑いこそ覚えたものの、それで解放されるならと妥協して中央処置室へ。
ベッドに寝転んで、クソみたいに太い針をぶっ刺して、拘束されること30分。
看護師さんたちの働きを観察していて思ったのは朝倉が実在したらいかに迷惑かってことでした。






点滴を終え、窓口にて書類を渡して再び待合。
待ち時間が長く、30分ほど待ってようやく呼ばれました。
検査をやって、そのデータを見ながら医師が渋い顔をしてる状況はドラマ等ではよくあるシーンですが、実際にはなかなか無い体験なので恐ろしく緊張。

ど、どうしよう……

胃がんを宣告されたらどうしよう……


「なるほど、そうですね……今聴こえづらいですか?」
「かなり聴こえづらいですね」
「(図を見せる)ここが外耳道と云って、この先に鼓膜があるんですね」
「はい」
「で、今その奥の中耳の部分に膿が溜まって、腫れが酷くなっている状態なんです」







中耳炎の膿が溜まっている






そんな溜まってほしくないものランキング第1位のものに溜まられても……
(2位コンビニ前のヤンキー、3位三角コーナーのゴミ、4位バーのツケ、5位文庫の上の埃)




「で、外耳炎も併発してるんですね。これは大したことはないんですけど、一番問題なのが膿が三半規管などの内耳にまで及ぶこと。発症率は高くないですが、神経障害を起こして難聴の症状も出ますし、治療を施しても完治に到らないケースが多いです」
「今治療で治しておけば内耳炎になる可能性は低いですかね?」
「そうですね、早い段階で膿を失くしておかないと」
「……前の病院では、中耳炎や外耳炎は無いって云われたんですけどね(苦笑)」
「えっ、そうなんですか? ……うん、最初の治療のあとで膿が出てきたんだと思いますよ」




まぁそりゃ、外耳炎を見つけられない耳鼻科医なんて勃起不全になった加藤鷹みたいなもんですから、さすがにそこは信用しておきましょう。
何せ、症状がはっきりしていて良かったです。レントゲン撮らないと分からないみたいなことになったら不安で仕方ないし。
で、治すには一体どんな薬を飲めばいいんですかね?



「治療なんですけど、鼓膜に小さな穴を開けてそこから膿を体内に押し流すやり方が一般的です。痛いですけど短期で治すにはこの方法が主流です」










鼓膜に穴を開ける






「……それって日常生活に支障は出ますか?」
「そうですね、痛みと多少の出血」






多 少 の 出 血






「おはよー」
「おはよう。あれ、うーちゃん、
耳血出てるで」





いやだ……!
そんな「閉ざされた森」でのジョヴァンニ・リビシみたいな死に方はいやだ……!(つたわれ~)


と、泣き言を云ってみたものの、早期に直して内耳に影響を及ぶのを防ぐためにはそれしか無い模様。
ウダウダしてても仕方ないので、「じゃぁとりあえずそれにします」初めての店で店長のオススメを頼んだ客みたいな感じで即決。
切開自体も大々的なものでなく、今この場で出来るものらしいので、器具を準備するので再びフロアで待たされました。
鼓膜に穴を開けるという響きが実感湧かず、徐々に心配がこみ上げてきましたが、
まぁ今は医療も進歩してるし、麻酔もするだろうしそんな痛くないでしょ! 余裕余裕(^-^)



次回、耳鼻科通院記3

あまりの痛さにアヘ顔晒して先生にガチ心配される
スポンサード リンク







プロフィール

寂々兵

Author:寂々兵
都会の映画祭や名画座に指を咥えながら日々を過ごす田舎在住の一介の映画好き。奇怪、不穏、不条理といったテーマの映画に惹かれますがフランスのラブコメも好きです。最近は80年代前後の未DVD化作品の発掘に邁進中。たまにライターなど。将来の目標はヒモ。

*好きな監督*
ジャン=ピエール・メルヴィル
キム・ギヨン
クロード・シャブロル
エドワード・ヤン
アレックス・デ・ラ・イグレシア
岡本喜八


Twitter
http://twitter.com/CinemaYouth3919

Filmarks
http://filmarks.com/users/Monteiro

カウンター

ブログ内検索

人気記事