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遁世雑記其ノ九 「バス日記3 騒音おばさん、踊り狂い仕り候」

田舎のバスと云うのは5分や10分の遅刻は当たり前で、
その日もいつもの如く7分遅れでやってきて、
座ろうにも席が全て埋まっており、前方の吊革に捕まった。

すると斜め後方から「ヴゥゥゥゥン」と、不愉快かつ怪奇的な音が聞こえてきた。
俺は朝っぱらから小学生時代好きだった子をヤンキーに寝取られる夢を見て苛立っており、ただでさえこの憤怒、にも関わらず癇に障る騒音、これはいかに、思案する間にも「ヴゥゥゥン」「グォゥゥゥゥン」「ブフォァァァァ!!」ジーパンが殉職したのかと思わせるようなけたたましい音が飛んできた。

そこで漸く気付いたんだけども、それはオバハンの唸り声だった。
ちょっと喉がイガイガしたときに「グフン」と鳴らすアレを、
そのオバハンは3秒に渡って、しかも尋常じゃないボリュームで鳴らし続けていた。
喉がおかしいのは分かるけども、他人の迷惑を考えるどころか喉とあごを前に押し出す感じで「もし日本でレ・ミゼラブルが映画化されたら主演は私よ」とでも云いたげにアピールするもんだから、俺の苛立ちは募るばかり、私の横に立っていた、山城新伍を上下に押しつぶしたような顔をしたおっさんはしかめっ面。

バスが信号に引っかかった間にも喉を鳴らし続け、いい加減にイラついてきたところで、遂に乗客たちの怒りを増長させる行為を始めた。

なんとそのオバハン、バスの中にも関わらず電話をかけはじめたのである。

普通、バスの中で電話がかかってきたら、電源を切るか、はたまた「今バスの中やから」と小声で云って切るのがマナーなんだけども、あろうことかそのオバハン、自分から電話をかけ始めた。
それも聞き取れた内容からして、「おじい様の発作よ、早く薬を!」と云った急展開じみたものではなく、田中さんの噂話のために。

運転手さんの「バスでの通話はお控えください」の忠告も無視する、その余りにも人目を気にしない憮然とした態度に、仏のうーちゃんと謳われた俺ですら理性の糸が切れてしまい、このオバハンいっぺん後ろ回し蹴り食らわしたろかと眉間に皺を寄せて、エクソシストの如く首を後ろに回して睨みつけたところ、






bus.jpg




隣に座っていた別のお婆さんがびっくりするほど露骨に嫌がっており、思わず俺の頭の中のシャンプーハットてつじがめっちゃ嫌がってるやんと突っ込んだ。

とにかく、急カーブを曲がるバイクよろしくの傾き方を見せるお婆さんに思わず拍子抜けしてしまい、オバハンに注意する気力すら無くなった。

しかしこの電話の合間にもヴゥゥゥン!! は欠かさず続けており、通知表には「努力家ですね」と書かれること請け合いなんだけども、更に迷惑なことにはバスが停留所に着く前に立ち上がろうとするもんだから、運転手さんも「バスが停止するまでは動かないでください!」と注意する。
が、オバハンはこれも無視し、立っている乗客にぶつかりながら前に進み、なおもヴンヴン云いながら「それで田中さんがねー!!!!」と大声で叫ぶもんだから、いよいよ運転手も堪忍袋の尾が切れたのか、
「あっ、お客様ぁ~~!! バスがぁ停止するまでぁぁ、ぁ~~動かないでくださぃぃぃ~~~!!!」全盛期の市川團十郎のような放送を大声で流し、他の乗客は怒りを笑いに打ち震えてパニック寸前、後ろの方に座ってる女子高生は「ウケルwww」とか云ってて、山城新吾伍はもはやただの山城新伍と同じくらいぶち切れてて、俺は一人で謎の腹痛に襲われた。

バスを降りる際にもオバハンは田中さんトークに花を咲かせ、まさか田中さんもこんな形で有名になってるとは夢にも思わないだろうけども、とにかく運転手さんは当然「有難う御座います」も云わず、「さっさと出ろ!」とでも云いたげな表情をしていた。


バスの中に平穏が訪れる。
「発車します、ご注意ください」の放送が妙に高揚していた。
窓から外を見ると、オバハンは電話を肩と耳に挟んだままカバンに手を突っ込み、探し物をしながら歩いていたんだけども、この後、木の根っこに躓いてよろけたのを、俺を始めとする乗客の殆どがしっかりと見ており、バス内ではほんの微かな充実感、5位決定戦に勝ったくらいの小さな満足感で溢れ返っていた。


いとをかし、いとをかし
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プロフィール

寂々兵

Author:寂々兵
東京の映画祭や名画座に日々指を咥えている田舎在住の一介の映画好き。フリーの事務屋とは名ばかりのふらついた生活を送っています。

好きな監督は
ジャン=ピエール・メルヴィル
ロバート・アルドリッチ
クロード・シャブロル
アレックス・デ・ラ・イグレシア
フリッツ・ラング
岡本喜八
野村芳太郎
など。

最近は専らゼロ年代の北欧ミステリ、海外アニメーション、80年代前後の未DVD化作品の大海をさすらってます。

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