遁世雑記其ノ十一 「バス日記5 其の騒音ババア、傍若無人につき」

前回の記事でも云ったように、あれだけ毎日バスを利用していたら何度も目にする客もあるわけで、例えば何曜日の何時のバスに乗ればあの人を見かけるという暗黙の認識もあって、昔一度それを利用して好みの女の子を眺めるために授業も無いのにせっせと早起きしてバスの時間を合わせていた話については語るつもりはないけども、何せ後部座席に座っていれば嫌でも客が見渡せるため、意外と「この人前も居たな」と覚えてしまうものなのである。

しかしながら、中には「もう二度と会いたくない」と思った客とも鉢合わせしてしまうのが世の常であって、タイミングの悪いことに、その日に乗ったバスに全米を震撼させたあのオバハンが現れたのである。

「騒音おばさん、踊り狂い仕り候」の記事を参照のこと)


端的に説明するとこのオバハン

・喉のいがらぽさをバス中に響き渡る騒音で解消しようとする(エコーがかかる)
・自分から友達に電話をかけて大声で世間話をし、運転手の忠告を無視
・バスが止まってないのに席を立ち、他の客にぶつかりながら降りていく

と、世界まる見えテレビ特捜部の外国人エロドッキリ並みに好き放題やりまくりのババアと、不運なことに再び鉢合ってしまったのである。

ババアは無駄に高級感溢れるバッグを振り回しながら、私の背後の席に座った。しかしいくら何でも、あの日はたまたま機嫌が悪かっただけのことでっしゃろ、今日はさすがに静かでっしゃろ、とババアのことなんか忘れて小説を読んでいると、後ろから嗄れ声の演歌が聴こえてきた。




「あ゛~~~き゛の゛ォォォォォ~~~~~あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛~~~~~~ぷ゛ぎゃ゛ぁぁ゛~~~ほいっとさぁァァァ~~~」







なぜだ……なぜこうなった……

楽しい気分はぶち壊し、ただでさえその時病み上がりの私の体には深刻なダメージ。

他の乗客たちも異変を感じ取ったのかざわつき始め、斜め前に座ってる女子高生なんぞは背後から聴こえてくる謎の演歌に「一体なんなの、私はヘンダーランドに迷い込んでしまったのとでも言いたげな恐怖の顔を浮かべていた。
運転手さんも鏡越しに後部座席を確認するが、「お客様、演歌を歌うのはおやめください」とも云えず、渋い顔。

耳栓持ってくりゃ良かったと後悔していると、ババアの騒音に混じって、優雅なクラシックの着メロが聞こえてきた。普段ならば着メロうるせぇこの野郎ってなるところなんだけども、この状況だと素敵やん、トレビアンやん、と思ってよくよく確認するとそれは騒音ババアの着メロだった。




ちくしょう、着メロも演歌にしやがれ……


なんで寄りによって着メロがグリーグのペールギュント「朝」なのか。大体そのクラシックは「あら奥様、おコートにおゴミが付いていらしてよ」とか云う上品なマダムが聴く曲であって、昼日中からワイドショーを見て剛力彩芽をこき下ろしてそうなババアが聴く権利など無いのである。

予想通り通話ボタンを押して、大声で話し始める。やれ森永さんがどうした、やれカフェインがどうした、くだらぬ話を延々と続け、バス中の視線を一挙に浴びても微動だにしないそのメンタルは最早尊敬に値するものであった。
そして電話を切ったかと思いきや、さっきの演歌の続きを歌い始め(ビブラートをかける)、かと思えば口調は演歌のままで無駄にキャッチーなリズムになり、「ほっ、ほぅ」とノリノリで揺れ始めた。









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バス停に到着した時も、相も変わらずバスが停車する前に歩き出し、頭とも喉とも云えない場所から「ファ゛ァ゛ァ゛ァ゛ーーーッ」くたばりかけのファービーみたいな異音が聴こえてきて、思わず大丈夫かいなと案じてしまった自分が嫌になる昨今なんだけども、今日も今日とて奔放のババアに振り回されて大敗北を喫した一日であった。



いとをかし、いとをかし

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プロフィール

寂々兵

Author:寂々兵
都会の映画祭や名画座に指を咥えながら日々を過ごす田舎在住の一介の映画好き。たまにライターなども。ヒモになりたい。

好きな監督は
ジャン=ピエール・メルヴィル
クロード・シャブロル
エドワード・ヤン
アレックス・デ・ラ・イグレシア
岡本喜八
など。

最近は専らゼロ年代以降ヨーロッパの喜劇映画や80年代未ソフト化作品の大海をさすらっています。

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