江戸の生き地獄『修羅』 87点

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修羅(松本俊夫/1971日)

四代目鶴屋南北『盟三五大切』の映画化で、御用金を騙し取られた塩冶浪士の復讐の話。女の手に刀を握らせて赤子の顔を貫かせ、討った女の生首に独白をかまし、酒をぶっかける中村嘉葎雄も狂気も去ることながら、時代劇にも関わらず夢と現実と妄想が入り乱れたアバンギャルドぶりにも驚く。生き地獄。小林正樹『切腹』、今井正『仇討』を凌ぐ厭な時代劇の鬼のような傑作。








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乖離『ピンクとグレー』 63点

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ピンクとグレー(行定勲/2016日)

中盤から展開が変わる、俳優目当てのファンがドン引きしているという前情報を散々聞いていたのでカニバリズム展開でもあるのかとヒヤヒヤしながら見たが、そんなわけもなく、ああ、そういう話かという感じだった。主張の込められた青春モノと、衝撃云々の宣伝・演出に落差がありすぎて異様にちぐはぐな印象を受ける。ただ、行定の青春のズレを描いた映画(『GO』『パレード』)、実は割と好きだったりする。それより何よりも後半の夏帆が神。








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理屈の合わねえものに歯向かいたいだけさ『吶喊』 83点

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吶喊(岡本喜八/1975日)

仙台藩軍の弱腰にブチ切れた下級藩士の高橋悦史が、仙台藩参謀の岸田森に「仙台藩兵はドンゴリ(ドンと大砲が鳴ったら五里逃げる)と揶揄されている」と叱咤する。岸田森はクールにあしらうが、その刹那大砲の音が鳴り、そそくさと立ち上がったかと思えば部下を引き連れて五里は逃げんばかりの勢いで立ち去る。このシーンが最高。そして高橋悦史の方も、岸田森の「百姓でも使って白河を取り戻してみろ」という捨て台詞を真摯に受け止め、地元の百姓と博徒を集めて「カラス隊」を結成し戦渦に赴く。主演は伊藤敏孝と岡田裕介で、この二人が時代の変革そっちのけで性と欲望に突っ走る様が面白いのだが、大人たちのやり取りも非常に痺れる(特に序盤の仲代達矢カッコ良すぎ)。喜八の中でも五本の指に入る戦争悲喜劇の大傑作。








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イーアルイーアルヤイヤイヤイヤイ『独立愚連隊西へ』 81点

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独立愚連隊西へ(岡本喜八/1960日)

北支戦線において、愚連隊集団が軍旗を取り戻すべく戦場を練り歩く話。一等兵が参謀に化けたり、戦場で生き別れた女を探す衛兵が仲間に加わったりと、要所要所のドラマが小気味良い。元ハンマー投げの選手で八路軍の親玉で人情味溢れる中国人役のフランキー堺なんて意味不明すぎて最高でしかない。戦争というセンシティブな題材をコメディタッチに仕立ててしまおうなんて不謹慎な監督ほど戦争への怒りや反戦意識が強く、それゆえにエモーショナルな傑作が生まれるという好例。








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振り向くなこの俺を『さよなら歌舞伎町』 61点

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さよなら歌舞伎町(廣木隆一/2015日)

数十分で作り上げたような表層的なエピソードをちょっとずつ絡ませただけの何ともない映画だが、終盤で前田敦子に『月のあかり』を歌わせたのにはグッときた。それに重ねて、各々絡み合った人たちが朝を迎えて別々に散っていく(街を出て行く)のはズルい。だみ声でがなってる南果歩と震災ネタはやかましいだけだった。本腰入れて見るんでなく、深夜に酒を煽りながら見る映画としては非常に良い。









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ええい祈祷の邪魔だ『女医の記録』 78点

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女医の記録(清水宏/1941日)

医者のない集落に研修で訪れた女医たちの数日間の記録。と聞くと否が応でも上小阿仁村みたいなのを想像してしまいがちなんだが、そこは清水宏、村人たちの物分かりが異様に良く、柔らかく物語が進む。田中絹代と佐分利信のメロドラマに傾倒し切らないやり取りが味わい深い。「虐められるので学校に行きたくない」と駄々をこねて木から降りてこない子供に対して、正義の女医が「意気地なし!」と叱咤するのにはさすがに時代を感じた。どこにでも現れる祈祷師(仲英之助)が素晴らしい。





(未ソフト化)


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ジェラール・フィリップの幕引き『勝負師』 67点

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勝負師(クロード・オータン=ララ/1958仏伊)

あんまり一般受けはしなさそうだがそれなりに面白い。賭博者を見下す~自分が熱中してしまうという一連の流れはコメディのお手本のようだが、撮り方が巧いので見入ってしまう。叔母の傍若無人っぷりがサイコー。一文無しになって帰るのかと思いきや、株券を売っ払う腹積もりだと察した侯爵一同の慌てようも笑える。 文芸喜劇から一転、原作が原作(ドストエフスキー『賭博者』)だけに終盤になるにつれて急激にどん底へと突き進んでいくが、ジェラール・フィリップの哀愁漂う幕引きには説得力がある。この映画の翌年に亡くなるのが信じられない。








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のどかな『ステップフォード・ワイフ』 64点

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ステップフォード・ワイフ(/)

ステップフォードの住民がほんのりと狂っており、引っ越してきた人妻が原因究明に奔走する話。ところどころベルイマンっぽい。ブライアン・フォーブスの手堅く頭の良い(ダラダラした)作りに安心しつつも終盤の超展開に頭が冴える。ラストカットが超怖い。キャサリン・ロスは美人なんだろうけど、ダイアン・キートンっぽくて苦手な顔である。











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A trois on y va!『彼らについて』 92点

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彼らについて(ジェローム・ボネル/2014仏)

カップルの両方と浮気をしている女……という三角関係の話で、縁があって仕事で鑑賞したんだが、これにはたまげた!女って怖いねえ、と言いたくなるような紋切型の愛憎劇、ドロドロ、嫉妬、悶着、一切なし。いわゆるLGBT映画という括りになると思うが、変に説教めいたセリフを演者が言ったりすることなく、ただただ本人たちが楽しんでいるところや、バレるかどうかというスリルをコミカルに演出しようという潔さに痺れる。件の女性を演じたアナイス・ドゥムースティエは弁護士という超インテリでありながら、この恋愛劇に心酔しきっているというギャップもたまらない。他者の介入を許さないような瑞々しさもさることながら、夜のドライブ、夜の逢瀬、浜辺での大はしゃぎなど映画的な嬉しさも満載で、とにかくもう1回観たい!『アバンチュールのとき』(13)と併せてソフト化を切に願う。





(未ソフト化)





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生首奇譚『殺人蝶を追う女』 81点

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殺人蝶を追う女(キム・ギヨン/1978韓)

自殺願望のある大学生がピクニックで蝶を追いかけていたら見知らぬ女に毒入りジュースを飲まされて死にかけ、何度殺しても復活する押し売り老人は「意志が大事じゃ!」と喚いて灰になり、鍾乳洞で拾った骸骨はいきなり美女へと生まれ変わって「肝臓をよこせ」と迫ってくるもんだから自動生成の米菓子が舞う中でセックスする…というこの変な映画は『下女』のキム・ギヨンの傑作で、現在の尺度で言えばカルトじみているのだが、ある意味では監督の直情さが随所に垣間見えている青春映画ともとれる。「1日にどれだけメシを食っても腹が減るから死にたい」と嘆くブコウスキーみたいな青年が終盤サンドイッチにがっついてるシーンなんてなぜか感動的なのだ。あと相変わらず階段の使い方が巧妙で、教授の娘が階上からヌッと現れる演出は『下女』かと思った。とまあギヨン節炸裂なのだが、俺はどちらかと言えば『異魚島』の方が好きです。





(未ソフト化)






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ババア!そこどけ!『みんなのしあわせ』 78点

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みんなのしあわせ(アレックス・デ・ラ・イグレシア/2000西)

当人以外にとってはどうでもいい争いを無駄に壮大なスケールで魅せる天才イグレシア。これもたまたま大金を手にしてしまったオバサンが住民の妨害をかいくぐってマンションから脱出するだけの話なのだが、近所のオバサン同士の喧嘩をまるで世界を賭した頂上決戦のように演出するなど、余りにエモーショナル。頗る面白い。オタク趣味全開だがここまでやられると清々しい。イグレシアはタランティーノと似たタイプの映画オタクの匂いがする。











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オッサンは常に悩んでいる『エゴイスト』 67点

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エゴイスト(ジョージ・ヒッケンルーパー/2001米)

「大事なものは近くにありすぎて気付かない」というクソベタな教訓を、アンディ・ガルシアが1時間40分かけて色んなことをやりながらようやく認識する話。ミック・ジャガーがとてつもない胡散臭さを始終身にまとっているにも関わらず、結局のところ悩める普通のオッサンだったというのは面白すぎるから勘弁してほしい。オリヴィア・ウィリアムズ(33)の圧倒的な暇を持て余した人妻感、満点。人妻・オブ・ザ・イヤー。











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堕ちていく『ビリディアナ』 74点

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ビリディアナ(ルイス・ブニュエル/西)

敬虔な修道女が女たらし、ホームレス、障害者、キチガイなどに絡まれていくうちにみるみる堕ちていく映画。ブニュエルだし堅苦しい宗教映画かな?と思って臨むと泡を噴く。映画史に残る地獄の饗宴。











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ゴリラが見ていた『ジェーン・バーキン in ヴェルヴェットの森』 61点

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ジェーン・バーキン in ヴェルヴェットの森(アンソニー・M・ドーソン/1973西独伊仏)

古城、凶暴なオランウータン(ゴリラ)、不気味な猫、地下通路に蝙蝠、秘密を握っている婆さん、わけありなイケメンと「いかにも」なギミック(ほぼ意味のない)が揃ってる館ホラー。クローズド・サークルでもあるまいに、誰一人として連続殺人の起こっている館から逃げ出そうとしないことに対する理由付けをしない潔さ。全てを見透かしたような顔をしているわりに作中で特に何もやってない警部役にセルジュ・ゲンズブール。ジェーン・バーキンは美しいが、走り方が死ぬほどダサい。こういう身も蓋もないジャッロ、嫌いじゃない。











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革命とおっぱい『バーダー・マインホフ 理想の果てに』 62点

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バーダー・マインホフ 理想の果てに(ウーリー・エデル/2008独仏捷)

言うまでもなくドイツ版『実録連合赤軍』(若松)、イデオロギーの暴走。砂漠での軍事訓練中に「ドイツの仕事は銀行強盗などの都市ゲリラだから砂漠の演習なんて無意味だ!」とごねるシーンが笑える。ゼロ年代ドイツ映画のいたる所に現れるモーリッツ・ブライブトロイさん曰く"性の解放と革命は同義"らしいので、前半はおっぱいがバンバン登場する(というか全裸の幼女のカットから始まる。良いのかこれ)面白さはまあ普通。











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プロフィール

寂々兵

Author:寂々兵
都会の映画祭や名画座に指を咥えながら日々を過ごす田舎在住の一介の映画好き。最近は80年代前後の未DVD化作品の発掘に邁進中。将来の目標はヒモ。

*好きな監督*
ジャン=ピエール・メルヴィル
キム・ギヨン
クロード・シャブロル
エドワード・ヤン
アレックス・デ・ラ・イグレシア
岡本喜八


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