遁世雑記其ノ十四 「バス日記8 極道バス、22人のババアと共に」

朝も早よから、友人の「性に飢えてる人妻はどこに行けば出会えるのか」とかいうどうしようもない悩み相談に答えてた日の話である。
そんなもん場末のバーに行けばごろごろおるやろと適当に小説で聞きかじった知識で対応していると、何やら視界に人の群れ。見ると、バスがバス停に停車しており、今まさに開かんとしているドアの窓から、ババアの群れがわらわらとうごめいているのである。

(余談になるが、俺は一般的なお年寄りについては「おじいちゃん」「おばあちゃん」と明記するが、自分を中心に世界が回っていると勘違いしてそうなマナーのなってないお年寄りについては「ジジイ」「ババア」と記すことをポリシーとしている。今回の場合も例に漏れず、お一人様1パックまでの卵を5個も6個も持っていこうとして店員と悶着起こしてそうな風袋の年寄りの団体だったので、これを一括して「ババア」と表記する。今までバスの中でマナーのなってないジジババ共から散々迷惑を被ってる故、理解頂きたい)

さて、このババア集団、ドアが閉まっている状態でもその奇声が嫌と云うほどに伝わったきたというのに、ドアが開いてからはこれはもはや放歌高吟、四方八方から飛び交うババアの奇声に酔ってしまい、思わず件の友人に「性と無縁のババアなら腐るほど見っけた」と送ってしまいそうになるほどの眩暈に襲われていた。

周りの客からも「こりゃ面倒なのと鉢合わせたな」というオーラが感じられる中、ババアが1人、ババアが2人、ババアが3人、ババアが……

合計、22のババアがバス内にわらわらと入り込んできた。これからピオレ姫路でババアの見本市でもやるんですかと尋ねたかったのをぐっと堪えつつ、元々空いていたバスなのであちこちに点々とババアが座り、俺を含めた後部座席の状態はこんな感じになった。



|若バ通ババ|
|ババ路バ俺|
|バババババ|




このさすがの武田軍も泡吹いて降伏しそうな布陣に手ぶらで放り込まれた俺、ぼんやり窓の外を眺めながら「昨日何か悪いことしたっけ」とノスタルジックな疑問に花咲かせていた。

ここからはババアたちの独壇場、運転手のアナウンスが掻き消されるレベルの爆音で喚く、がなる、叫ぶ。

A「あらちょっと、今日クーラー効きすぎてない?」
B「そうかしら、丁度いいくらいやと思うけど」
C「むしろちょっと暑いくらい」
A「いやぁ、効いてる、効いてる。寒いわあたしは」
B「そんなにかねぇ、私はそんな風には思わんね」
C「暑いってば。走ってきたからかね」
A「いやー、あたしは寒いね。誰が何と言おうと寒い」


家でやれ。
そんな不毛なローテーション漫才で俺の朝を汚さないでほしい。

E「ほんでね、うちの主人がよ、先週から病院行ってて」
D「あらぁ、どないしはりましてん」
E「いやぁ、腸のなんや手術するんや云うてな、医者から入院しろ云われてるんですわ」
D「せやったらお腹切りますの」
E「そらもう、切りますがなそりゃあんた。ファッサーて」



ファッサー。
そんな意図も簡単に人が切られてたら座頭市も苦労しないんだけども、
とにもかくにも、聖徳太子がオーバーヒート起こすレベルのババアの混声大合唱に何故だか窒息死の畏怖を感じた俺は、しばしの間、無の境地に到達することで数十分の難を凌いだ。何んともおぞましい朝だった。

さて、この日の運転手は、丸刈りに赤ら顔、薄い眉に濃い髭という呉のやくざみたいな風貌の男だったんだけども、
「お客様、もう少しお詰めください」とか云ってたので小指の話ですかと心の中で突っ込んだり、
はたまた「発射します、ご注意ください」ってそれは拳銃の話ですかと戦々恐々しながら、
終いには「ありがとうございましたー」足洗いましたーに聴こえてしまい、やくざも大変だねぇ、生きづらい世の中になったねぇ、と同情の眼差しを向けながら、ババアの群れをかき分けてバスを降りたのであった。


いとをかし、いとをかし

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プロフィール

寂々兵

Author:寂々兵
都会の映画祭や名画座に指を咥えながら日々を過ごす、シネフィルでもマニアでもない田舎在住の一介の映画好き。たまにライターなど。ヒモになりたい。

好きな監督は
ジャン=ピエール・メルヴィル
クロード・シャブロル
エドワード・ヤン
アレックス・デ・ラ・イグレシア
岡本喜八
など。

最近は専らゼロ年代以降ヨーロッパの喜劇映画や80年代未ソフト化作品の大海をさすらっています。

Twitter
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