名探偵コナンに登場する無茶苦茶な犯人TOP10(’14.10改訂版)

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「あいつは自分のソムリエとしての品格、名誉、プライドを踏みにじったんだ!」




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「そんなくだらん理由で人を殺したのかね……」





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「愛する人と犯罪を共有することが愛情表現だと思っていたんだ……」





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「そんなくだらん理由で人を殺したのかね!!」






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「俺は義経になりたかったんや!!」






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「そんなくだらん理由で人を殺したのかね!!!」





 * * *




はいどうもこんにちは。

前回の「名探偵コナンに登場する渋いおっさんTOP10」 に関しては嬉しいことにtwitterやLINEなんかで予想以上の反響がありまして、調子に乗って第2弾まで作ってしまった上にシリーズ化してやろうと目論んでいます。




名探偵コナンに登場する無茶苦茶な犯人TOP10



・名探偵コナンの原作に登場する全犯人の中で、無茶苦茶だと思った犯人を独断と偏見で10人選出する企画です
・基準としては、目的達成のために行った行動の無茶苦茶さに限定させて頂きます。動機はあまり考慮してないし、行動が大胆であっても必要性がある或いは同情し得るものはあえて外しています。
・平然とネタバレしているので、未見の方はご注意ください(コミック76巻以降のネタバレはしていません)
・また今回につき、劇場版の登場人物はランキングに入れていません。なぜなら劇場版の犯人は武器商人と爆破テロリストしかいないからです。




それではいきましょう!




 * * *



第10位 沢井学 (初恋の人思い出事件/18巻)

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所業:意中の女性に振り向いてもらうために、その女性を一人家に残してわざと火を付けて助け出そうとする

童貞の妄想か。狙ってる女の子がいて、友人に頼み込んで襲ってもらって、そこを勇敢に救出! →ホテルへ、みたいな安直な妄想、中学生の頃は誰でも一回はやりましたよね、と思ってよく見ると犯人22歳のイケメンプレイボーイて……。
何が面白いかって、火の回りが思ったより強すぎて躊躇してる間に蘭とコナンに先越されてるっていうね。その間、犯人は遠方から「こっちが安全だー!」って叫んでるっていう。お笑いかねこれは。
挙句の果て、クライマックス、件の女性(しかも4つ下)から「人の心を無理やりこじ開けようとしても開いてはくれませんよ……」と説教される始末。俺なら切腹してる。





第9位 諏訪雄二 (骨董品コレクター殺人事件/6巻)

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所業:被害者が日本刀でタンスにダイイングメッセージを残したため、それを隠すためにタンスの引き出しを入れ替え→そこだけ傷があると不自然なので畳から壁から床から全てに無造作に刀傷を付けまくる→犯人が居合いの師範である自分だと疑われぬようにあえて被害者に持ち手を逆にした刀を握らせる。

全部燃やしてしまえよ。ややこしいわ。
しかもこの派手すぎる殺害現場を見た目暮は「うーむ、被害者は犯人と一戦交えた末に命を絶たれたのですなあ」とかいってる始末。どんな大立ち回りを演じたら天井に傷がつきまくるのか小一時間問い詰めたいところです、大丈夫か日本の警察。
因みにこの事件の容疑者は4人で、1人は犯人、1人は「俺は阿久津大先生だぞ!」と事件現場で喚き散らす彫刻家、残りの2人は浮気してるので登場人物の無茶苦茶率100%です。おめでとうございます。





第8位 荻野 (月いちプレゼント脅迫事件/3巻)

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所業:自分の息子が盲腸で死ぬ→逆恨みで手術を担当した医者に、息子が使っていたゲームとかけていた保険金2500万円分を毎月送り続ける→2年後、逝去した自分の息子と同い年になった医者の息子の命を奪おうとする。

「この犯人が行った行為はあなたにとって善か悪か」とかいうディベートが発生しそう。犯人の狙いとしては、息子の遺品を送り続けることで医者を苦しませる思惑だったと思うんですが、当の医者本人はまるまる2年間「なんでこんなのが送られてくるんだろう」全然意味が分かってなかったっていうね。これでは死んだ息子も浮かばれません。
しかも毛利は毛利で、毎月送られてくる奇妙な遺品とお金について「受け取っておけばいいじゃないですか!」「何ならお金だけでも私が預かりましょう」「犯人は子供におもちゃを送ることであなたの機嫌を取ってるんだぁ!」とか云ってる始末。これを犯人が知ったら多分自殺する





第7位 天永和尚&秀念僧侶(霧天狗伝説殺人事件/11巻)

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所業:密閉した部屋に滝の水を流し込み満杯にしながら、死体を濡れないようにゴムボートに乗せてゆっくり上昇→梁に紐を通して首を吊る→外に出て、入り口反対側の壁を斧で叩き割り、満杯になった水を外に吹き飛ばす→霧天狗の仕業だ!!

これは犯人よりも屈強すぎる木造建築の方が無茶苦茶じゃないでしょうか。犯人が2人になってますが、天永和尚が2年前にこの方法で一人の僧侶を殺害し、現在、その弟である秀念僧侶が復讐のために同じ方法で天永和尚を殺害しました。
突発的に和尚を殺してしまった秀念君は「死体を前にして、和尚が使ったトリックで犯行を隠すしか方法が無かったんだ」とか云ってますが全然そんなことないですからね。自首なりなんなり色々ありますからね。
因みにこの事件、眠りの小五郎のおでこにスピーカーを付けたり、トリック再現のために目暮警部をびしょ濡れにしたりとコナンの無茶苦茶っぷりも凄いです。





第6位 ひとみ  (ジェットコースター殺人事件/1巻)

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所業:ジェットコースターがトンネルに入った僅かな時間にセーフティガードから抜け出す→ガードに足をかけ体を後ろに伸ばし、ロープの輪にフックを取り付けた器具を被害者の首にかける→フックをレールに引っかけて2つ後ろに座っていた男の首を吹っ飛ばす。

記念すべき名探偵コナン最初の事件。初っ端からこんな派手な事件をやらかしといて売上が伸びなかったら編集の首も吹っ飛んでたところですが、何とかサンデーの看板漫画となり今に到ります。恐らくコナンの犯人の中では一番すごいことやってるのに、尺の都合で20ページくらいで解決しちゃった可愛そうな人。
この事件の直後、工藤新一はジンの兄貴にぶん殴られてコナンが誕生します。事件現場で「体操選手ならこれくらいできるでしょう」あまりに適当なこと抜かした天罰が下りました。





第5位 佐竹好実 (毒と幻のデザイン/74巻)

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所業:辞書の「若」の項目に毒を塗っておく→「若」という字を被害者に何度も見せてゲシュタルト崩壊を起こさせる→「若」の字を書かないといけない書類を渡す→被害者、「若」の字が思い出せない→辞書を引かせる→指に付いた毒を舐めさせて殺害

そんなやつおらへんやろ。こんな暗殺方法レクター博士でも思い付きません。クレイジーダイヤモンドと錯視のトリックは妥協するにしても、これだけは無茶苦茶すぎて唖然としました。いくらネタ切れにしてもこれはちょっと……。監修が島田荘司とかなら納得できるんですけどね。もう辞書で殴り殺した方が早いと思うんです。
ただでさえジャンパーの肘だったり中華テーブルの内側だったり色んなところに毒を塗る犯人の多い漫画ですが、そのうち毒殺犯全ての胴元である毒の組織とかいう集団が出てくるんじゃないかと危惧してます(高遠的な)





第4位 西川睦美 (青の古城探索事件/20巻~21巻)

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所業:城に隠されていると噂される宝のために、奥様や娘、友人、使用人など15人を焼き殺す→大奥様を拉致監禁殺害して彼女になり替わる→秘密の通路に侵入した使用人を餓死させる

出る作品を間違えてる。このババアは金田一の方に出るべきだと思う。過去の話とはいえ、十数名を殺すとはコナンにしては非常に珍しいお話。
これだけの所業を成しておいて、実際のお宝が「窓から見える景色」っていうね。もしこのババアが鬼束ちひろだったら「こんなもののために生まれたんじゃない」大熱唱してエンドロールですが、あるかどうかも分からないお宝のために外国に飛んでまで整形する根性を評価して堂々の第4位です。
因みにお宝への入り口は暗号で示されていたんですが、「大広間にあるデカい肖像画の裏」というそこ以外どこを探すんだって場所にありました。このババアは数十年何を呆けてたんでしょう。





第3位 高橋良一 (山荘包帯男殺人事件/5巻)

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所業:証拠を掴まれた蘭を襲うも失敗→殺害した女性をバラバラにする→首を服の中に入れてデブを装う→蘭を襲うも失敗→蘭を襲うも失敗

コメント:意味が分からなすぎる。まず体型をごまかすために首を服に入れて走るっていう発想が突飛すぎて脱帽。
本人は怖がりキャラのようで、作中でもたびたび「怖いよぉ……」と嘆いてますが、自分がコナン史上一番怖い事件を起こした張本人だと自覚してるんでしょうか。図書館や古城を凌駕するトラウマ回です。
冒頭の蘭のシーンを伏線に使うのは巧妙でしたが、もしも蘭が初っ端から「高橋さんもっと痩せてませんでしたっけ」とか云ってたら全員バラバラになってたことでしょう。ちなみにバラバラ事件は大人の事情によってこれ以降見られません。





第2位 道脇正彦 (園子のアブない夏物語/22巻)

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所業:茶髪の女に振られた腹いせに、海に遊びにくる茶髪の女を無差別に惨殺しまくる→電車のパンタグラフをカメラのフラッシュと勘違いし、園子に殺人現場を撮られたと錯覚→園子が持っているという秘蔵の写真を手に入れるべく奔走(実際は蘭の水着写真)→まずは宿で襲いかかるもののコナン達に邪魔された挙句ふくらはぎを噛まれて失敗→2回目は自らの車を爆発炎上させたというのに蘭に邪魔されて失敗→最後は林の中で園子を追い詰めるものの京極真にボコボコにされて逮捕される。

何なんだこいつは……。特定の条件に絞った無差別の犯行はコナンの中でも稀有。茶髪が当たり前のなった今の時代では多少違和感を覚えます。
友人に電話で「第2弾はコナンの無茶苦茶な犯人ランキングをやろうと思う」って云った際に「園子を狙いまくったアイツは無茶苦茶だったなぁ」と返されたときは企画やめてやろうかと思いましたが、この事件はやはりファンにとっては印象的だったのではないでしょうか。
いくら交わされても諦めないそのストイックな姿勢に敬意を表して堂々の2位入賞です。通知表には「努力家だけどもう少し効率的に」と書かれると思います。 





第1位 日原(屋田)誠人 (殺人犯、工藤新一/62巻)

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所業:お世話になってた村長一家が殺害される→その事件を工藤新一が無理心中と推理する→真相は別にあったが、犯人は上の空で聞いてなかった→そのせいで工藤新一を逆恨みし、多額の遺産を使って工藤新一の顔に整形して悪行三昧を働こうと目論む→記憶喪失になった振りをして服部たちに溶け込み、手始めに真相を掴んだ記者を刺す→証拠残しまくりで服部たちにすぐ真相を見抜かれる→駐在から村長事件の真相を聞かされ絶望する→しかも記者は殺し損ねてた→その頃本物の新一は死羅神様になっていた

もう何が何だか。この漫画では男性医師に変装する女優だとか130歳の老婆に変装する娘だとか色んな変装の達人が登場するんですが、まさか62巻にして主人公にまで変装するとは……。その動機が完全な逆恨みで、しかも本人が人の話を聞いていなかったからってのがまた無茶苦茶。一番の労力を使って何一つ実らなかった残念すぎる人。
工藤新一のツラで街中を歩いててウォッカあたりにぶち殺されてたら面白かったんですが、ただでさえ工藤新一を恨んでる人間ばかり住んでいる村でよくあんな顔してられるもんです。
でもまぁ確かに、ここまでのことをやらかしといて徒労に終わるのも絶望的な心中お察ししますというわけで。泣き崩れる自分の顔を見た工藤新一は「泣き崩れる自分の顔を心に刻みつけるべきだと思った」意味不明な名言を残しています。
因みに冒頭の役所のシーンでは服部たちが工藤新一の名を出した途端、役員や客がざわめき始めたので「麻生圭二だとぉ!?」って展開になるのかと思ったら違いました。




 * * * 



はい、というわけで無茶苦茶な犯人ランキングでした。いかがだったでしょう。
「あいつが居ないじゃないか!」ってのもあると思いますが、まぁ堪忍してください。
散々ネタにしましたが、俺は名探偵コナンが大好きです。

それでは次回、「名探偵コナンに登場する犬死にした人TOP10」でお会いしましょう!

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遁世雑記其ノ十三 「バス日記7 恐怖、無銭クチャラー親父の不羈奔放」

1年ほど前の、水曜か木曜か金曜(もしかしたら月曜か或いは火曜)の話になるが、通学のバスにて、かつての

・ドアを叩きまくり難解単語を連発して両替で道を塞ぐけったいなババア
・大声で電話して唸り散らして運転手の忠告を無視して演歌を歌う騒音ババア

に匹敵する、自由奔放すぎるおっさんを見かけた。

その日、俺は一番後ろの左側の席に座り、眠い眠いと思いながら本を読んでたんだけども、同じ大学の生徒が次々と乗ってくるのに混じって、小柄で初老のおっさんが最後列の右側、つまり俺の反対側に座った。
で、そのおっさんと俺の間に、大学の女の子(知らない子)が座った。
この状態でバスが発車する。

バスが天下の姫路城前に差し掛かった時、静かに座っていたおっさんが本性を剥き出しにした。
おっさんはまずポケットに手を突っ込んだかと思うと、おもむろにあられを取り出して貪り始めた。何が面白いかって、ポケットからあられの袋を取り出すのではなく、ポケットからあられを直接取り出して貪っているのである。
ほんでこのおっさん、歯が頑丈なのか、噛み砕く時の音が尋常ではなく、運転手の「次は郵便局前」の音を掻き消すレベルの「ガブリ」、否もはや「ズブリ」とか「モブリ」とか「デブリ」とか、人生で1回聞くか否かの擬音であられを喰い続けている。この時点でバス内にはあられの匂いがプンプンしているわけであって、決して嫌な匂いではないんだけども、朝のバスくらい爽やかに眠らせろって話である。

そんな感じで、四次元ポケットも真っ青なくらい次々とあられを繰り出すおっさん、バスが交差点を左折した際に喉に詰まったのか、急激にむせ始める。
そのむせ方も尋常でなく、
「うぉっしゃおんぶるおらぃ、わっしゃーほぎゃっそいそい、うぇってぽんがぁそやぁーほヴぉぉぉぉ」と野生動物の交尾みたいな唸り声で派手にむせ始めた。
運転手を始めとしたバスの乗客たちも、
「なんやサバンナの動物が乗ってんのか」
「あぁおっさんか、このおっさん大丈夫かいな」

みたいな顔で次々と後ろを振り向く。

そして次の瞬間、おっさんは何を思ったのか、自分の手をグーにしたかと思うと、胸や腹や背中をポカポカと殴り始めた。
恐らく本人は、つっかえているあられを何とか食堂に戻そうと頑張ってるんだろうけども、例えばこの時点で乗客が乗ってきた場合、後ろの席に自分の体中をぶん殴ってるおっさんが座ってる図になるわけで、これはもう「何あのドM親父」みたいな感じでドン引き、するとその横に座ってる女の子や俺まで変態扱いされかねないわけで、この状況をどうにかせんければと思っていると、おっさんは漸くつっかえが取れたようで落ち着きを取り戻した。
しかしその落ち着き方も尋常でなく、普通なら「はぁ、はぁ」といった感じの呼吸になるはずが、「ふぁぁぶるるる、ふぁぁぶるるる」と昆虫記の先生が現れたってな感じの斬新な落ち着き方をし始めた。

それも次第に弱まっていき、最終的には「あ゛ぁぁ、あ゛ぁぁ」10年後の加藤鷹みたいなあえぎ声を出し始め、これに懲りて大人しくするやろ、思ってたら再びあられを喰い始めた。
しかも今度はさっきの伊吹吾郎のような豪快な喰いっぷりでなく、クチャクチャ、クチャクチャ云いながら食っていた。


やせいの くちゃらーが あらわれた!


かつて「仏のうーちゃん」「許容範囲広太郎」「器大之助」と呼ばれた俺でも、クチャラーだけは我慢できぬほど嫌い、どれくらい嫌いかと云うとクチャラーの父親と7年間まともに会話してないくらい嫌いなんだけども、それを朝の爽やかなバスで繰り出されたものだからこれはもう怒髪衝天、睨みを利かせてやろうとエクソシストの如くじわじわと右を向くと、隣に座っている女の子も「うんざりしている」を体現したような顔で溜息をついており、思わず抱いてやろうかと思った

さて、騒音ババア並みに色んな騒音を繰り出すこのおっさん、あられを食ってる途中に普通に演歌を歌ったり(バスで演歌を歌うのが最近の老人のトレンドなのか)、はたまたランニングに精を出している同年代のおっさんを窓から見て「元気なこっちゃ、おらぁ」と意味不明な感傷に浸ってたり、一人で色んなことをやってるんだけども、これは置いておくとして、最終的にやってはいけないことをやり始めた。

何んとそのおっさん、あられの粉に塗れた手を、隣の女の子のバッグの上で払い始めたのである。勿論、これは意図的にやっているのではなく、手を払った位置にたまたまその子のバッグがあっただけの話なんだけども、そもそも席の上で手を払う必要は無いし、バッグがあるのは見れば分かることである。
にも関わらず、「うぃー」と云いながら堂々と手をゴシゴシしている。
女の子はというと、露骨にバッグをどけるわけにもいかず、けれども「うわ何だこのジジイ、やめてキモイ、喉仏から毒キノコが生えて窒息死しろ」とでも言いたげな表情をしていた。
もしこの女の子が和田アキ子だったらおっさんの首がアラレちゃんになってたとこなんだけども、ただ学校に行くためにバスに乗っただけなのに、見ず知らずのクチャラーにバッグをあられ塗れにされた女の子を気の毒に思いつつ、その日は始まった。前途多難とはこの事だろうか。

因みにこのおっさん、競馬場の前で降りようとしてたんだけども、お金を持っておらず運転手に凄い勢いで怒られてた。女の子もさぞ「自分に嫌がらせをした人が怒られている」という至福に浸っているだろうと思って右を向くと、般若と山姥を足して2で割ったような表情で、けれどもどこか儚げな様子でバッグの粉を振り払っており、思わず抱いてやろうかと思った



いとをかし、いとをかし

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遁世雑記其ノ十二 「バス日記6 茜さす帰路照らされど、腹痛と激臭の辻」

確か1年ほど前の、夕焼けがえげつないほどに煌々と輝いていやがった日の話になる。
その日は学校からの帰り際、バスで死ぬほどの腹痛に襲われ、と云うか学校出て数分で余りの痛さに気を失って気付いたら駅前だったので一回死んだと思うんだけども、まぁ、なんやかんやで、駅に着いたらトイレに行けばええでっしゃろ、そんな軽い気持ちで姫路駅に降り立つと、時刻は17:48であった。

一部の諸兄姉は知っている通り、俺は真冬になると洗濯機の水道がガッチガチに固まり、熱湯ぶっかけてトンカチでぶん殴りでもしない限り水が通らぬほどの田舎に住んでいるわけで、バスの本数が滅法少ない。

今回の場合も、17:55のバスを逃すと1時間待たねば次のバスが来ないのであって、こんな姫路の駅前で1時間もどうやって暇を潰すねんアホンダラ、くだらねぇと呟いて冷めたツラして歩いてたんだけども、確か昔暇すぎる夏休みをジュンク堂で4時間過ごした歴史を無かったことにしつつ、腹痛のバイオリズムも収束しかけていたので、大人しくバスに乗ることにした。

さて、バスなんだけども、いわゆる後ろから乗って、中央通路を挟んで二人座りの席がずらりと並んでいる形式だったんだけども、ノンステップのバスとは違って段差が激しいため、お年寄りにはなかなかの鬼門である。
この日も、ちょっと押せばずっと揺れてそうなご老体が一人、バスに乗ろうとしていた。息子らしき男が先に乗り込んでいたんだけども、これがなかなかの奇想天外な風体で、カーボーイハットから天然パーマがもじゃもじゃとはみ出ており、顔は黒縁眼鏡にひげだらけ、靴下はピンク、すね毛丸出し、白タンクップという浜田の息子と山下清のキメラみたいな恰好をしていた。

後ろの父親はなかなか階段を上れず、息子が手伝ってくれると思ったら先に行ってしまったので、「チッ、ファンダラァ……」みたいなことを呟いて、周りの人が手を貸しつつ、1分ほどかけてバスに乗り込んだ。

俺もその後に続いて前の方の席に座ると、暫くして隣に老婦人が座ってきた。座るときに笑顔で「すいません」と丁寧に云ってくれたものだから、嗚呼、こんな老人になら年金払ってやってもいいなと思ったところで、鼻をつんざくような衝撃的な臭いが飛び込んできた。香水である。
俺は敏感肌ならぬ敏感鼻の持ち主で、きつい匂いには滅法弱く、香水やシャンプーの並んでいる店頭では白目を向いて昇天することでお馴染みなんだけども、今回のは今までのそれを軽く凌駕するほどの激臭で、鼻がもげてバスのフロントガラスを突き破って姫路城の天守閣に衝突して哀れに砕け散った。
それと同時に、治まっていたはずの腹痛が再びやってきて、降りようにもバスは発車するし、隣の夫人の匂いがきつく昏倒寸前、体も麻痺して動かぬものだから、眩暈を起こした。

腹痛、激臭、頭痛と闘うこと数分、俺はふわふわとした浮遊感を体験し、よく分からん諦観にも似た珍妙な悟りを開き、例えば脳内にあるモヤついた黒点が膨張して体に電撃が降りかかり、頭の中ではアイルランドの少女が歌ってるという始末、果てに空間と同一化するような境地に到達し、目を覚ました途端、腹痛も激臭も吹っ飛び、俺はバスの外を見てゲラゲラ笑いだした

途端、隣を見たことのある体が通り過ぎる。病院前のバス停で、例のキメラが降りて行ったのだ。
それに続いて父親も付いていくのだが、荷物が多くて段を降りられない。普通の親子ならば荷物を持ってやるなり、手を引くなりするんだけども、この息子、バスを降りたきり背伸びをするばかりで一向に見向きもしない。
ここで父親がぶち切れる。
「わりゃ、荷物持たんかい、ボケ!!」
バス中に響き渡る声で外の息子に怒鳴り散らす。
「あがぁ、おどりゃぁ、んなとこで伸びとらぁ、がぁしくさりやがりゃぁぁぁ!!!」
と、アラビア語混じりの罵詈雑言を浴びせかけるが、息子は頭がイってしまっているのか、それとも父親が嫌いすぎてどうしようもないのか、一向に動じない。バス内に不穏な空気。

暫く似たような問答を繰り返した後、一向に手を出さぬ息子と降りられぬ親父に業を煮やした運転手が「息子さん、荷物持ってあげて!!」と怒鳴る。息子はなおも動かない。俺の後ろに座ってる競馬帰りのおっさんが舌打ちする。運転手は時計を見てイラつく。息子は、クソ親父さっさと降りてきやがれと眉間に皺を寄せる。父親は菅原文太のような怒号を捲し立てる。俺は腹が痛い。バスはこの瞬間、日本で最も殺伐としていた。

ややあって、見るに見かねた周りの人たちが手を貸し、父親は何とか降りられたが、この馬鹿息子、父親の真っ赤な顔を見て眉一つ動かさず、自分の荷物だけを持って歩き出した。
運転手はそれまで「発車します、ご注意ください」だったのがッシャッシャッシャァァァー!!!になった。黄信号を無視して爆走する。

このやり取りを、目をひん剥いて鑑賞していた隣の老婦人は、俺に向かって「いやぁ、すごいねぇ……」と話しかける。
俺は心の中で、否、確かに凄いが微々たるものだ、今この空間で一番凄いのは一向に治まる気配の無い俺の腹痛、二番目はあんたのそのえげつない臭い、あんなどこの馬の骨とも知れぬ親子のやり取りなんぞは銅メダルだ、と云う皮肉を込めて満面の笑み。

バス停について、隣の老婦人に「すいません、降ります」と云うと、「あら、はいはい」と云いはするものの、立つのが面倒臭いのか、足を後ろにちょっと引込めるだけ。
ただでさえ狭いというのに、この腹痛の日に限ってこんな隙間を通れと抜かし腐るのか、クソババア、やはりお前には年金などびた一文払わぬ、憤懣やるかたない、歯を食いしばれ、てな具合で無事家までたどり着き、冷や汗で濡れた服を廊下に脱ぎ捨て、トイレに籠った。



いとをかし、いとをかし

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名探偵コナンに登場する渋いおっさんTOP10(’14.10改訂版)

名探偵コナンに登場する渋いおっさんTOP10


・名探偵コナンの原作&映画に登場する全おっさんの中で、渋いと思ったおっさんを独断と偏見で10人選出する企画です
・平然とネタバレしているので、未見の方はご注意ください。(劇場版最新作及びコミック未収録作のネタバレはしていません)



それではいきましょう!


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第10位 譜和匠(劇場版:戦慄の楽譜)

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第10位は劇場版「戦慄の楽譜」より、堂本ホールの官庁である譜和匠さん。
写真ではめちゃくちゃ穏やかなお爺ちゃんですが、舞台を控えた歌手の飲み物に毒を入れたり、コナンとヒロインを工具でぶん殴って運河に放ったり、裏道をトラックで爆走したり、ライフルで脚を撃ったり、挙句の果てにありとあらゆる場所に爆弾を仕掛けて生徒を吹っ飛ばしまくりとアラブの武器商人かってくらいに色々とやってます。
しかし原作では「月光」「ストラディバリウス」など傑作が多い音楽をテーマにした作品、映画になると何故こうなってしまうのでしょうか。




第9位 枡山憲三/ピスコ(黒の組織との再会)

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第9位は、黒の組織から唯一のランクイン、ピスコさん。
灰原がいるはずの暖炉に銃を向けたらジンになって出てきたという、デビットカッパーフィールドもびっくりの奇術に茫然としたまま射殺された残念な人。
「君はまだ赤ん坊だったから覚えちゃいないだろうが、科学者だった君の両親と私はとても親しくてね……」と云う述懐がなかなか哀愁漂ってます。
因みに、彼を父のように慕っていたという組織の一員アイリッシュさんは、工藤新一が生きていることを証明してジンを失脚させるつもりが、コナンをかばってキャンティに射殺されるという意味不明なハードボイルドを見せてくれました。




第8位 如月峰水(劇場版:天国へのカウントダウン)

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第8位は、良い子のみんなの前で「天国へのカウントダウンと云えばー?」と聞くと「きさらぎほうすいー!!」と返ってくることでお馴染み(?)の、如月峰水先生。
家から富士山が見えなくなったという理由で、人間2人ぶっ殺してビルまで爆破したという森谷帝二も唖然の芸術魂を持ってるお爺ちゃん。
被害者と嫌悪になるに至った動機を突き付けられた際は「そんな理由で人を殺めたりせんよ」と云ってますが、実際はそれよりしょぼい理由で殺めてるのがポイント。
コナンの中では大変希少価値の高いお爺ちゃんキャラなので印象も強いですね。沢木公平と並ぶ有名な犯人ではないでしょうか。




第7位 セルゲイ・オフチンニコフ(劇場版:世紀末の魔術師)

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第7位はまたしても劇場版、世紀末の魔術師に登場したセルゲイ・オフチンニコフさん。
この人も渋いですねー、格闘家のような風格、銀髪、しかもロシア人。
「そうか、ボルシェブニック・カンツァーベカだ!!」はコナン映画史上に残る名言です。
登場した際には「インペリアル・イースターエッグは元々ロシアのものだ、だからロシアに返還しろ!」と荒ぶっており、さすがの鈴木会長もじゃぁお前は北方領土返せって顔してましたが、しかし終盤、ニコライ皇帝一家の先祖代々の写真を見た際には「このエッグは日本の偉大な遺産のようだ。ロシアはこの所有権を放棄する。貴女が持ってこそ価値のある物だ」と想像を絶するダンディズムを見せつけました。
その後、これだけの大黒柱のような心強さと知的さを持ち合わせていながら、犯人が発覚した際には「青蘭さんがスコーピオン!?」作中ダントツのアホ面を晒したことも、ギャップ萌えと云うことでポイント加算です。
因みに同作には乾将一という美術商も登場しており、この人も外見はなかなか渋いんですが、登場して1分足らずで「得体の知れないブローカー」と罵られたり、トイレに行く振りして宝を盗もうと企むものの罠に引っかかって大恥をかいたり、挙句の果てにたまたま殺されるという始末なので除外しました。




第6位 堂本一揮(劇場版:戦慄の楽譜)

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第6位は「戦慄の楽譜」から2人目の登場、堂本音楽アカデミーの創始者である堂本一揮さん。
コナンで堂本と云えば巨大神像の上で刺されたおっさんを思い出すんですが、特に因果関係は無いようです。
絶対音感を持つ人間がごろごろ出てくる本作の中で、一番偉いくせに絶対音感持ってない残念な人。
30年来の友人の名誉とプライドのために自らが黙って職を降りたというのに、それを友人に「辞めるなんて自分勝手だ! 殺す!!」と無茶苦茶すぎる解釈をされたことは多くの人の心を痛めました。
コナンが爆弾を解除してなかったら自らのアドリブ演奏で爆死してたという、最初から最後まで運が良いのか悪いのか分からないおっさんです。




第5位 遠山銀司郎(浪花の連続殺人事件、他)

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第5位はこの人。作中なかなか下の名前が出てこなかったために、ネットでは最近まで黒の組織のボス扱いされてた遠山のおやっさん。
坂田はんの事件の際の「今はまだ私の部下です。手、出さんといてもらえますか」の一言でファンを増やしまくりました。
最近活躍の場が与えられず、大阪府警にて服部平蔵と2人で「それが犯人の狙いっちゅうわけか」ぼやき倒すのが仕事みたいになってますけど、せめて大阪で事件が起こった時くらいはしっかりと出張って欲しいもんです。




第4位 磯上海蔵(中華街 雨のデジャヴ)

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第4位は「中華街 雨のデジャヴ」より、磯上海蔵監督。碇ゲンドウではありません
卵アレルギーの被害者に対してピータンを食わせまくって殺した超極悪犯です(※違います)
動機はスタントで事故死したヒロインの復讐なんですが、それを「でも監督は彼女をど素人だってバカにしてたじゃないっすか!」と云ってきた語尾にやんすが付きそうな助監督に対して「バーカ、映画監督ってのは因果なもんでな……カメラのレンズ越しにずっと見続けてると、ヒロインに惚れちまうんだよ。たとえその娘がどんなに不細工な大根役者でもな……それが分からねーようじゃ、お前は一生助監督のままだよ」と切り返して全米がスタンディングオベーションしたことは記憶に新しいです。




第3位 大東幹彦(孤島の姫と竜宮城)

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第3位は「孤島の姫と竜宮城」より、大東幹彦さん。
「グソーの使いにマブイを取られたくなけりゃシーグを咥えときな」ルー大柴みたいなおっさんですが、昔は遊び呆けてて人生を達観したような面構えをしており非常に渋いです。
と思いきや、実はその正体は屋敷の元執事。二階堂黎人の小説で、それまで普通の喋り方をしていた人物が犯人だと判明した途端に「フハハ! そうさ私が奴らを殺したのだ。貴様らに私の苦悩は分かるまい」30年前の大魔王みたいな口調になる話があるんですが、本作でも彼が犯人で且つ執事だと判明した途端、敬語で喋り始めるというギャップ萌え。(正体を隠すために荒々しい親父を演じていた)
昔は清楚だったお嬢様がギャルになってて、気付かずに殺してしまったというfacebookで見つけた同級生あるあるみたいなラストで非常に物悲しいお話でした。我らが姫路城も登場します。




第2位 鮫崎島治(20年目の殺意 シンフォニー号連続殺人事件)

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第2位はシンフォニー号より、鮫崎元警視。
娘を殺した強盗団を時効間際まで追い続ける渋すぎるおっさんです。渋さ余って本作の後半では「あいつもいなくなったのか!」「どうなってんだこの船は!」「探せ毛利!!」の3つをローテーションで喚いてる印象しかなかったですが、最後も犯人にビシーッと決めて良いところを持っていきました。
小五郎の同窓会事件の中道のパターンで彼を犯人だと思っていた人も多いのではないでしょうか。
画像は原作では描かれてなかった、時効までに犯人を捕らえられなかった警視がバーカウンターにて一服をする哀愁漂うシーンです。決してチュパチャプスを舐め終わったシーンでは無いのでご了承を。




第1位 小田切敏郎(劇場版:瞳の中の暗殺者、他)

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栄えある1位に輝いたのは、コナン界における渋さの神、小田切敏郎警視長でした。
いやー、渋いね。とにかく渋い。声も渋い。
twitterで「コナンに登場する渋いおっさんランキング作る!」って呟いた直後、コナンファンの友人に「小田切警視長はガチ」って云われたときは企画やめてやろうかと思いましたが、やはり彼のファンは多いようです(恐らくコアなコナンファンに顕著)
何故、渋さの塊である彼から紫芋みたいなパンクロッカーが生まれたのでしょうか、母親の顔が見てみたいもんです。
小学生であるコナンに犯人を暴かれたにも関わらず「先に真実を明らかにしたのは、どうやら君の方だ」と云って敬礼する様なんかは、漫画やドラマでは悪く描かれがちな警察官僚のイメージを払拭させました。
「瞳の中の暗殺者」にて活躍した後、「天空の難破船」「沈黙の15分」に連ちゃんで出演すると聞いたときは歓喜でしたが、ふたを開けてみれば二作とも冒頭で記者会見して退場という、どこかのギャンブル漫画における敵組織のNo.2を彷彿とさせる影の薄さで泣きたくなります。


 * * * 


というわけで、終わってみれば10人中5人が犯人と云う、渋いおっさんは登場頻度が少ない割に人殺し率が高いというデータが出てきました。人を殺したいほどに苦労してきた人は人間的に深みが増して哀愁漂うとかそんな感じなんでしょうか(適当)
茂木遥史やトマス・シンドラー、服部平蔵、ジェームズ・ブラック、春岡参治など他にも色々と入れたかったんですが、人数の都合上で脱落しました。

それでは次回、「名探偵コナンに登場する無茶苦茶な犯人TOP10」でお会いしましょう!


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遁世雑記其ノ十一 「バス日記5 其の騒音ババア、傍若無人につき」

前回の記事でも云ったように、あれだけ毎日バスを利用していたら何度も目にする客もあるわけで、例えば何曜日の何時のバスに乗ればあの人を見かけるという暗黙の認識もあって、昔一度それを利用して好みの女の子を眺めるために授業も無いのにせっせと早起きしてバスの時間を合わせていた話については語るつもりはないけども、何せ後部座席に座っていれば嫌でも客が見渡せるため、意外と「この人前も居たな」と覚えてしまうものなのである。

しかしながら、中には「もう二度と会いたくない」と思った客とも鉢合わせしてしまうのが世の常であって、タイミングの悪いことに、その日に乗ったバスに全米を震撼させたあのオバハンが現れたのである。

「騒音おばさん、踊り狂い仕り候」の記事を参照のこと)


端的に説明するとこのオバハン

・喉のいがらぽさをバス中に響き渡る騒音で解消しようとする(エコーがかかる)
・自分から友達に電話をかけて大声で世間話をし、運転手の忠告を無視
・バスが止まってないのに席を立ち、他の客にぶつかりながら降りていく

と、世界まる見えテレビ特捜部の外国人エロドッキリ並みに好き放題やりまくりのババアと、不運なことに再び鉢合ってしまったのである。

ババアは無駄に高級感溢れるバッグを振り回しながら、私の背後の席に座った。しかしいくら何でも、あの日はたまたま機嫌が悪かっただけのことでっしゃろ、今日はさすがに静かでっしゃろ、とババアのことなんか忘れて小説を読んでいると、後ろから嗄れ声の演歌が聴こえてきた。




「あ゛~~~き゛の゛ォォォォォ~~~~~あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛~~~~~~ぷ゛ぎゃ゛ぁぁ゛~~~ほいっとさぁァァァ~~~」







なぜだ……なぜこうなった……

楽しい気分はぶち壊し、ただでさえその時病み上がりの私の体には深刻なダメージ。

他の乗客たちも異変を感じ取ったのかざわつき始め、斜め前に座ってる女子高生なんぞは背後から聴こえてくる謎の演歌に「一体なんなの、私はヘンダーランドに迷い込んでしまったのとでも言いたげな恐怖の顔を浮かべていた。
運転手さんも鏡越しに後部座席を確認するが、「お客様、演歌を歌うのはおやめください」とも云えず、渋い顔。

耳栓持ってくりゃ良かったと後悔していると、ババアの騒音に混じって、優雅なクラシックの着メロが聞こえてきた。普段ならば着メロうるせぇこの野郎ってなるところなんだけども、この状況だと素敵やん、トレビアンやん、と思ってよくよく確認するとそれは騒音ババアの着メロだった。




ちくしょう、着メロも演歌にしやがれ……


なんで寄りによって着メロがグリーグのペールギュント「朝」なのか。大体そのクラシックは「あら奥様、おコートにおゴミが付いていらしてよ」とか云う上品なマダムが聴く曲であって、昼日中からワイドショーを見て剛力彩芽をこき下ろしてそうなババアが聴く権利など無いのである。

予想通り通話ボタンを押して、大声で話し始める。やれ森永さんがどうした、やれカフェインがどうした、くだらぬ話を延々と続け、バス中の視線を一挙に浴びても微動だにしないそのメンタルは最早尊敬に値するものであった。
そして電話を切ったかと思いきや、さっきの演歌の続きを歌い始め(ビブラートをかける)、かと思えば口調は演歌のままで無駄にキャッチーなリズムになり、「ほっ、ほぅ」とノリノリで揺れ始めた。









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バス停に到着した時も、相も変わらずバスが停車する前に歩き出し、頭とも喉とも云えない場所から「ファ゛ァ゛ァ゛ァ゛ーーーッ」くたばりかけのファービーみたいな異音が聴こえてきて、思わず大丈夫かいなと案じてしまった自分が嫌になる昨今なんだけども、今日も今日とて奔放のババアに振り回されて大敗北を喫した一日であった。



いとをかし、いとをかし


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遁世雑記其ノ十 「バス日記4 ニーハイ美人と円盤老婆、往々にして春」

けったい(関西弁で"奇妙"の意)なオバハンはどこにでもいるものである。
例えるならば、先月に書いた記事の騒音ババアなどがその典型であって、1日4本×3年もバスに乗ってりゃそれはもう色んな人間がいるわけで、ネタの尽きないバス日記なんだけども、その中でも私がバス日記を書くに至ったきっかけとなった、けったいなオバハンの話でもしようと思う。

あれは私が2回生の春であるから丁度2年前の今頃のことであった。
通学のため、私がバスの座席に座っていると、途中で25歳~30歳ほどの女性がK停留所から乗ってきた。
その風貌たるや魅力の塊そのもので、黒髪ロングストレートに前髪ぱっつん、小顔に黒のカーディガン×ミニスカ×ニーハイという革命的な形振りをしており、これでもし眼鏡なんかをかけていようものなら公共云々を差し置いてでも丁重に襲わせてくださいというほどに感動的な光景であった。

さて、この女性が通路を挟んで反対側、つまるところ私が右列に座っているので彼女は左列の1つ前に座ったものだから、私の目線では絶対領域が光り輝いて見える位置に聳えているのである。私はコンマ数秒を競う速さで、しかしさり気なく鞄から茶縁の眼鏡を取り出し、これを冥途の土産にしてやろうかといった勢いで其れを凝視していた。(特に大学等で私をクソ真面目君と勘違いしている諸兄、諸姉に云いたいんだけども、ご覧の通り私は変態なのでよろしく)

バスは進み、Oバス停に到着した際、一人のご老人が乗ってきた。禿げた頭に眼鏡、杖と云う、老人たる老人が前方の席に着き、扉が閉まる。そして運転手が「発車します、ご注意ください」と云った瞬間にそれは起こった。

先ほど絞められたドアが物凄い音で叩かれたのである。ドンドンドン! ドンドンドン! と、太鼓の達人の練習なら家でやれと突っ込みたくなるほどのリズムを奏でながら、扉は鳴らされた。しかしながら、物を飲み込んだ直後に物を飲み込むのが不可能なように、一度閉まりかけたドアをすぐにまた開くというのは機械の都合上無理なわけで、再びドアが開かれるまでの間に合計20回にも及ぶ太鼓が叩かれた。

これには乗客の誰もが度肝を抜かれ、さすがの私でさえも件の女性から3秒ほど目を離すという大失態を犯したのだけども、ドアの向こうに立っていたその人物の姿を見たときは、脳天を突き破るほどの衝撃を受けた。







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そこに立っていたのは湯婆婆であった。
否、生物学的に云えば"湯婆婆モドキ"なのだと思うが、その円盤頭たるや明らかに湯婆婆である。いや、もしかしたら銭婆の方かもしれないとかそういうことを云ってる場合ではない。

私は右目で湯婆婆、左目で女性を眺めるというギネスに載るほどの神業を成し遂げていたのだが、やはりその老婆の外見は一言二言で形容し難いものであった。老婆はバスに乗り込むなり、運転手に向かって「ふぉぉ、ふぉぉぉ、すいましぇん、ありがちょう、くごぽーー」神の加護を受けたスラムの住人みたいな言葉を発していたのだが、まぁ、こんなけったいなオバハンもおるやろと、気にせずに女性を視姦していたところ、筆舌に尽くし難い事件が発生した。

あろうことかその老婆、華麗なる絶対領域を持つ女性の横に座ったのである。と云うよりも、その老婆が無理やりに座ったと解釈すべきか、とにかく老婆は女性の横に立ちはだかり、「ふぉぉぉぉ、すいましぇん、あしょぺひーーー」命乞いするショッカーみたいなことをがなり立て、女性も半ば押し切られる形で横に詰めた。

さて、これで私の視界に入りやがるのは、嗚呼、風光明媚なる絶対領域から湯婆婆の円盤頭である。たわけが。「人生なんてこんなもんだよね」と諦観しつつ、駅に着くまでぼんやりと過ごした。

次の問題が発生したのは終点駅前に着いたときで、何をとち狂ったかその湯婆婆、バスが停車するなり凄い勢いで前方に駆け出し、何事かと思い傍観していると獅子奮迅の及び腰で両替を始めた

私はこの浮世においての嫌いなものが色々とあり、偽善者だとか、歯医者とか、虚栄心の強いやつとか、自己中とか、まぁ色々あるんだけども、その中の一つが「両替をするにも関わらず後ろで待たない人間」なのだ。

今更ながら、私の地域のバスと云うのは後乗り前降り後払い方式なので、その湯婆婆が両替機の前を占拠することで、乗客全員が立ち往生することになる。急いで居る時にこれをやられると殺意さえ湧くのだ。公共マナーをわきまえている人は、両替をする場合は全員が降りるのを待ってから動いたり、横に避けたりするものである。

私はイライラしつつも席を立ったところ、斜め前方の女性が同じく通路に出ようとしていたので、「お先にどうぞ」の意味を込めて紳士的にさっと手を差し出すと、女性はニコッと笑い、軽く礼をしてくれた(昇天)

この出来事が人生の絶頂だと切ないなとわけのわからんことを考えつつ、その女性の後ろを歩いていたところ、身の丈173の私と同じくらいの、女性にしては高身長であることが判明した。しかも香水とは違う、女性独特の良い香りをプンプンさせていやがったので、「嗚呼、何ちゅう匂いを発しとるんじゃこのアマ、ボケが、ええ加減にせぇよ、こんな薄汚い私と結婚してくださいと心の中で念仏のように唱えていた。

こんな素敵な妄想に耽っている間にも湯婆婆は動じず、と云うのも、どうやら湯婆婆は両替の方法や値段がよく分からぬらしく、運転手と色々と問答をしていたのである。運転手が「後ろのお客さんの邪魔になりますから」と云っているのだが、それに対して湯婆婆は「ふぉぉ、ぉぉ、ちゃうねん、なんでや、ふぉぉぉ」宇治市を京都と認めないと云われた安田美沙子みたいな反応を見せつけ、他の乗客をイライラさせ続け、そして前の女性は私をムラムラさせ続けやがった。嗚呼、往々にして春。

埒が明かないと思ったのか、湯婆婆の後ろにいたサラリーマン風の男性が強行突破の勢いでバスを降りたので、それに続く形で眼鏡の老人、女性、そして私も降りて行った。私が湯婆婆の横を通った際、彼女は「くがぽぇぇ、すいましぇぇ、けごほぉぉ」と云ってきた。ちくしょう、長生きしろよ。

バスを降りて駅前の大通りを歩き、学校行きのバス停に並ぶ。そこで偶然友人と会い、他愛も無い会話を交わす。絶対領域の美人とは別方向であった。一期一会。無常。

すると、ふと数メートル離れたバス停から、聞き覚えのある音がした。ドンドン! ドンドン!
見ると、先ほどの湯婆婆が、今にも発車しようという別のバスを引き留める形でドアを乱打していた。
友人が「けったいな婆さんやな」とぼやく。同調。
湯婆婆は無事バスに乗れたようで、遥か遠くから「ふぉぉぉぉぉ」と聞こえてくるようであった。


いとをかし、いとをかし
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プロフィール

寂々兵

Author:寂々兵
都会の映画祭や名画座に指を咥えながら日々を過ごす、シネフィルでもマニアでもない田舎在住の一介の映画好き。たまにライターなど。ヒモになりたい。

好きな監督は
ジャン=ピエール・メルヴィル
クロード・シャブロル
エドワード・ヤン
アレックス・デ・ラ・イグレシア
岡本喜八
など。

最近は専らゼロ年代以降ヨーロッパの喜劇映画や80年代未ソフト化作品の大海をさすらっています。

Twitter
http://twitter.com/CinemaYouth3919

Filmarks
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