『刑務所の中』の浄土 78点

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刑務所の中(崔洋一/2002日)

いい年した中年俳優たちが年末年始のおせち料理が待ち遠しい、あいつの乳首小さいから見てみろよ、大杉漣のちんこの先にティッシュが付いてるぜみたいな話をダラダラやってるだけの映画なんだが、実家の安心感みたいな魔力を内包し、山崎努の達観した語りに神々しさすら覚える傑作。その達観ぶりとは裏腹に、あの年齢で醤油かけご飯の美味さに気付いたり、シャバに出たら封筒貼りの内職で食っていこうとしている妙に世間知らずなところも愛らしい。特に好きなのは免業日の昼寝シーンと、独房に入った山崎が至福の表情で茶をすするシーン。オープニングのシューベルト『子供の情景』、ラストのドヴォルザーク『わが母の教え給いし歌』の切なさもたまらん。あと特典映像で、松重と香川曰く「村松さんは『ここは1カットだろう。ほら、俺も映画が分かってきたぞ。ここも1カットだ、ここも1カット』と言っていたが彼は単に早く終わりたいだけ」、崔洋一曰く「松重がオーディションにロン毛で現れて『どうせ受からないだろうから生の崔監督を見に来た』ってふざけた野郎だ」と役者たちが色々暴露されてるのも最高だった。毎年寒くなってきたら必ず見てます。









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ロリコン・チャップリン登壇『ブロンドと柩の謎』 61点

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ブロンドと柩の謎(ピーター・ボグダノヴィッチ/2001加英独)

『市民ケーン』のモデルとなったメディア王W・R・ハーストが所有する客船で1924年に発生した「オネイダ事件」の映画化。ボグダノヴィッチが心底信頼できるのはチャップリンを下品な女たらしとしてしっかり描いているところで、実際にチャップリンは好色漢として有名で4度の結婚を経験している(しかもロリコンである)。そしてそれを演じるのがエディ・イザードで、またマリオン・デイヴィスを演じるのがキルスティン・ダンストと、まったく似せる気のないキャスティングにもいちいち笑える。しかしハリウッドの内幕を描いたこの群像劇を『ナイルに死す』よろしくの本格海洋ミステリみたいな宣伝をかましてしまったため、日本での評価はズッコケた。まあ、群像劇と知って見れば面白いか?と聞かれても首を縦に振れないのだが。







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神たる教師による歴史認識の過ち『白いリボン』 71点

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白いリボン(ミヒャエル・ハネケ/2009独仏伊オーストリア)

ハネケの映画には、神の視点を持つ語り手は今まで一度も出てきてないんだが、この映画では「教師」なる人物が冒頭からベラベラと喋っていて、では彼は一体?というのもこれは一言で言うと「教育」の映画であって、閉塞された村での圧政的な教育がファジスムの種へと生まれ変わり、それが世界中で胎動していることへの警鐘。そして第一次大戦によって村の不文律が崩壊し、白いリボンによって抑圧されていた子供が生まれ変わるまでを描く作品である。ゆえに教師がずっと喋っているんだが、ではこの映画に隠された謎は何ぞと言うと、それを解明するのは不可能であると言える。なぜならこの村は世界の歴史そのものであり、世界中の悪意の根源であり、それらをひも解くことは神が成し得ることであって、その神たる教師が歴史の認識を誤っているのだから。それに気付いていざ立ち返ると、冒頭で教師が何気なく語る言葉が最も重要であると言っても過言でなく、よく考えられた凄い映画であることはいわんや理解できるが、鑑賞中は退屈だったことはどうしても否めない。







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芸術とは何ぞやと続く禅問答『アートスクール・コンフィデンシャル』 83点

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アートスクール・コンフィデンシャル(テリー・ツワイゴフ/2006米)

地方から出てきた童貞君が美大に溢れ返る自意識・承認欲求・ナルシズムの大渦に呑まれながらも、自身の考える芸術を追及する青春ロマンスミステリコメディ……と書くと堅苦しそうな印象を受けかねないが、題材とは裏腹にエンタメとして超面白くて首がもげた。芸術に対する意識の矛盾とズレ、シニカルな諦観。ブシェミ、マルコビッチ、ブロードベント、アンジェリカ・ヒューストンと胡散臭さの塊みたいな大人たちが次々出てくるのも説得力ありすぎて最高。新入生が学生寮に入るところから始まる青春映画は全部面白い。








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頭の良いバカVS頭の悪い鬼才『犯罪心理鑑定人』 64点

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犯罪心理鑑定人(グレゴリー・ギエラス/2001米)

犯罪心理鑑定医が封鎖された精神病院で連続殺人犯から逃げ回る話で、まあ定石通り登場人物は大体アホなのだが、何となく無下にできない味わい深さがあった。例えばどう見ても脳筋レスラーの連続殺人犯が薬学や工学を駆使して緻密な罠を仕掛けたり、下からちょっと突いただけで天井がメキメキにぶっ壊れたり、いよいよ追いつめられたヒロインの近くに都合よく手榴弾が置かれてたり、連続殺人犯をハンマーでボコボコにするヒロインを見て娘がドン引きしてたりとまあ要するに色々と酷いのだが、コメディに寄りつつもギリギリのところでスリラーに徹する作り手のポテンシャルを感じる酷さだった。着衣尻多め。







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プロフィール

寂々兵

Author:寂々兵
都会の映画祭や名画座に指を咥えながら日々を過ごす田舎在住の一介の映画好き。最近は80年代前後の未DVD化作品の発掘に邁進中。将来の目標はヒモ。

*好きな監督*
ジャン=ピエール・メルヴィル
キム・ギヨン
クロード・シャブロル
エドワード・ヤン
アレックス・デ・ラ・イグレシア
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